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Wednesday, January 1

元日。5時45分起床。晴れてはいるが雲の多い空。帰省とは縁のない気楽な身分で、正月だからと特別にやることもなく、いつもどおり部屋の掃除を軽くしてから、身支度を整え、お湯を沸かして珈琲豆を挽く。京都の焙煎所「Roastery DAUGHTER/Gallery SON」で購入した豆を使い切る。珈琲を飲みながらエコノミスト誌のアプリ「Espresso」で世事を確認。ラジオを聴く。InterFMは元旦でも特別編成にしないので、普段の平日とおなじく「THE GUY PERRYMAN SHOW」がはじまる。

正月は食べるものだけ普段とちがう。おせち、雑煮、熱燗。お酒は渋谷ヒカリエの「久世福商店」で購入した「辯天 特別純米酒 つや姫」。日本酒に詳しくないのでこのお酒を熱燗で飲むのが適しているのかよくわからず、インターネットで調べてみると「かるく冷やしてお召し上がりください」と書いてある。でも熱燗を飲みたいので読まなかったことにして熱燗にする。ところで先ほど読んだエコノミスト誌の記事によれば、健康志向もあって、世界的な傾向として若年層を中心にアルコールの消費量が減っているとのこと。

昼間は快晴。近所の公園をぐるっと散歩してから、自宅に戻って雑煮の残りを食べて、映画を見る。『躍る結婚式』(シドニー・ランフィールド/監督、1941年)を見る。多くのフレッド・アステア映画がそうであるように、本作もまた、いい加減な脚本と素晴らしい踊り。

晩ごはん、豚肩ロース肉のステーキ、種入りマスタード、年末に渋谷スクランブルスクエアの「Les Viandes par Table Ogino」で買ったパテドカンパーニュ、トマトとサニーレタスとベビーリーフのサラダ、イタリアンドレッシング、ブリーチーズ、ボルドーの赤ワイン。

夕食をとりながら、radikoで「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート」を聴く。指揮はアンドリス・ネルソンス。記憶力が衰えているので去年がどうだったかを明確に憶えていないのだが、少なくとも数年前までは権利関係を理由にニューイヤーコンサートはインターネットラジオでは聴けなかったはずで、いま聴けるということはいつのまにやら権利関係の問題は解消したことになるわけだが、しかしこの「権利関係」という言葉は方便として便利なマジックワードのような気がして、どこまで信用できるかわかったものではない。

夜、写真集や画集を中心に蔵書の棚卸しをおこなう。澁谷征司『BIRTH』(赤々舎)を読む。MUBIの映画を一本、『孤高』(フィリップ・ガレル/監督、1974年)を見る。

Thursday, January 2

お金があればどうにでもなることを実証するカルロス・ゴーンの逃亡劇を横目にみつつ、今年はできるかぎり節約に努めようと誓うも、買いたいものは既にあって、年頭のセールも行く気満々である。

朝ごはん、目玉焼き、トースト、トマト、サニーレタスとわさびドレッシング、トーストとあんバター、ヨーグルト、珈琲。本日から朝食は平常運転。

本年最初の読書は、『夜になっても遊びつづけろ 金井美恵子エッセイ・コレクション 1』(平凡社)。

地下鉄を乗り継いで皇居近くの竹橋駅まで。目的は一般参賀などでは勿論なく、東京国立近代美術館。先着115名にカタログやらポスターやらのプレゼントを贈呈するらしく入口前には行列ができているのだが、そちらの行列はスルーして、開催中の企画展「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」の券売所に向かう。例年、1月2日は恵比寿の東京都写真美術館に足を運ぶのが慣例となっていたのだが、楽しみにしている橘雅友会による雅楽演奏の日程が今年は4日と5日に変わってしまったので、目的地を東京国立近代美術館に鞍替え。「窓展」はおもしろかった。

竹橋から高田馬場経由で新宿に向かう。たくさんの人で賑わう新宿駅周辺。ルミネエスト地下1階にあるギャル系の店の店員が集客のために発狂したような声を張りあげている。東口にでて「ユニオンレコード新宿」で買いもの。以前から狙いを定めていた新しいレコードプレーヤーを買う。今年最初の買いもの。レコードを聴くようになって、プレーヤーだけがあまりに貧弱なものを使っていたのでそろそろ買い換えることにした。TEAC社の「TN-400BT」。付属のカートリッジはaudio-technica社のもの。インテリアとしても成立する洗練された見た目が気に入ってこれにした。環境が揃って音が安定してよくなった(はず)。もっとも専門家によれば、オーディオでいちばん重要なのは機材ではなく部屋らしいのだが ((昔のレコードもちゃんとかけるとすごくいい音 :: デイリーポータルZ))、部屋をどうにかする予定も意思もない。

昼過ぎから非直系親族宅にておせち第二弾。飲んで食べる。日本酒を飲みすぎて、夜にセルベールを服用する羽目に陥る。夜、プレーヤーの動作確認のためにDonald Fagen「The Nightfly」のレコードを聴いて、市橋織江『Gift』(MATOI PUBLISHING)に目を通してから、早めに就寝。

Friday, January 3

朝ごはん、目玉焼き、ベーコン、トマト、サニーレタスとわさびドレッシング、バゲットとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。

山手線で有楽町駅へ。胃がもたれ気味なので昼ごはんはうどんにしようと、東急プラザ銀座の「つるとんたん」に向かう。11時半に到着すると店の前はすでに行列だったが、席数が多いのでそれほど待つことなく店に入れた。鴨のうどんを食べる。東急プラザ銀座の店舗をひととおり見てから、ルミネ有楽町に移動する。年始のセールに参戦。「UNITED ARROWS」でワイシャツとネクタイ、「TOMORROWLAND」でボトムスを買う。セールは朝一から来ないと駄目なのか、ルミネ有楽町のセール品はだいぶ捌けてしまっていたのでマロニエゲート銀座の「UNITED ARROWS」も覗く。途中、喉が乾いたので有楽町駅のスターバックスでバニラクリームフラペチーノを飲む。「無印良品 銀座」に立ち寄って日用品を買って帰る。

晩ごはん、ローストビーフ、鴨と緑胡椒のテリーヌ、蛸とオリーブ、グリーンリーフとベビーリーフのサラダ、イタリアンドレッシング、チェダーチーズ、スパークリングワインと赤ワイン。

『夜になっても遊びつづけろ 金井美恵子エッセイ・コレクション 1』(平凡社)に収められている、金井美恵子による開高健に対する容赦のない悪口を読んでむしろ興味を唆られて、ひょっとして面白いのではと思って開高健『衣食足りて文学は忘れられた!? 文学論』(中公文庫)を読んでみたのだが、あまり面白くなかった。

夜、『Stark Fear』(ネッド・ホックマン/監督、1962年)を鑑賞。

Saturday, January 4

正月休みというより、事実上、ふつうの土日。そう考えると気が滅入る。朝ごはん、目玉焼き、ベーコン、ステッペンチーズ、トマト、サニーレタスとイタリアンドレッシング、バゲットとあんバター、ヨーグルト、「とらや」の最中、珈琲。

カルロス・ゴーンの国外逃亡をめぐって、インターネット界隈の局所では「ゴーン」の名に乗じて、除夜の鐘だのタンスにゴーンだのと大喜利の様相を呈していたが、エコノミスト誌に目をとおすと、このたびの件についての記事のタイトルが「Ghosn, going, gone」だった。洋の東西を問わず駄洒落にされやすい人なのだろうか。

渋谷へ。リニューアルされた銀座線の渋谷駅の様子を覗いてから、渋谷ヒカリエの「d47食堂」で昼ごはん。開店まで15分ほど時間があったので、同フロアで開催していた小山登美夫監修の「Hikarie Contemporary Art Eye vol.13 9人の眼 9人のアーティスト」を見学。「d47食堂」では島根定食カマスの一夜干しを食べる。少し値が張るけれど、ここの定食はとても美味しい。

半蔵門線で渋谷から清澄白河へ。東京都現代美術館に向かうまでの道程の途中、「しまぶっく」と「smokebooks」に寄り道。古本とレコードを買う。以下、買ったもの。
・平岡篤頼『パリふたたび』(小沢書店)
・相倉久人『現代ジャズの視点 失われたリズムを求めて』(角川文庫)
・水木しげる『劇画 ヒットラー』(ちくま文庫)
・夏目漱石『倫敦塔・幻影の盾』(新潮文庫)
・McCoy Tyner「Trident」
・Thelonious Monk「Solo Monk」

東京都現代美術館で「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」「ダムタイプ|アクション+リフレクション」「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」を見る。ミナの展示が飛び抜けて混んでいた。すべての展示を見終えたあと、美術館内の「NADiff contemporary」で『Casa BRUTUS特別編集 ミナ ペルホネンと皆川明』(マガジンハウス)を買う。帰りに少し肌寒い夕暮れ時の木場公園を歩く。

晩ごはんは、おせち料理で余った材料を使い切る戦後処理。豚バラ、白菜、ほうれん草、竹輪、蒲鉾などの食材に白だし鍋にして、卵雑炊で締める。副菜に人参と里芋の煮物。日本酒の熱燗を飲む。

夜、本日購入したレコードを聴く。『Divine Horsemen: The Living Gods of Haiti』(マヤ・デレン/監督、1985年)を見る。

Sunday, January 5

KIRINJI「cherish」とスカート「トワイライト」とドレスコーズ「ジャズ」をSpotifyで聴きながら、洗濯と掃除と常備菜づくりを済ませる。早朝から充実の家事労働。朝ごはん、目玉焼き、ベーコン、トマト、サニーレタスとイタリアンドレッシング、ステッペンチーズ、ヨーグルト、ライ麦粒のパンとあんバター、六花亭の「マルセイバターサンド」、ヨーグルト、珈琲。

レコードを聴きながら「とらや」の黒砂糖入羊羹と珈琲で休憩。Quincy Jones「Big Band Bossa Nova」とTed Heath & His Music「Swing Is King-Volume 2 – A String of Pearls」を聴く。後者の日本盤タイトルは「真珠の首飾り/栄光のスウィング・デラックス=第2集」。ブラックキャブのドアノブを握る女性のジャケットが気に入って、去年「中古レコードのタチバナ」でジャケ買いしたものだが、聴いていて愉しいよいアルバム。

近所のスーパーで買いもの。最近の買いものではレジで現金をだす機会がほとんどなくて、クレジットカードかアプリで支払う。キャッシュレス化を推進する政府の方策自体は気に食わない側面もあるが、損をするのも癪なので、可能なかぎり現金を使わない生活をしている。仕組みはちゃんと調べた人間が得をするようにできている。

昼ごはん、つぶあんのお汁粉、「中川政七商店」で購入した月ヶ瀬の緑茶。食後、珈琲を飲みながら『Casa BRUTUS特別編集 ミナ ペルホネンと皆川明』(マガジンハウス)を読む。

夕方、プロジェクターで映画鑑賞。『生きるべきか死ぬべきか』(エルンスト・ルビッチ/監督、1942年)を見る。

晩ごはん、鮭のソテー、スキレットで焼いたロースハム、サニーレタスとコーンとトマトのサラダ、レモン、マッシュルームのオリーブオイル炒め、丸の内の「Mary’s Café」で買ったルルガレット、京都の「仔鹿」で買ったクロアチアの赤ワイン。日本におけるワイン市場は一部の通たちのせいで高級志向が蔓延っているが、もっと気軽に飲める安酒であるべきで、家で飲む安価なワインを提供する「仔鹿」のコンセプトにとても共鳴するのだが、東京にも似たような店が欲しい。