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Tuesday, August 13

早起きし、朝食抜きでメトロに乗って、グンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェレンツの設計による森の墓地(Skogskyrkogården)を訪れる。一年ぶり二度目。初めて訪れたときの感動にはさすがに及ばないものの、ほとんど人影のない早朝の森の墓地はやはり圧巻の光景だった。言葉が出なくなる場所というものが世の中にはある。さすがにもう当分来ることはないだろう広大な土地をゆっくりと散歩する。一時間ほど経過したところで、墓地を後にし、ストックホルム中央駅に戻った。

中央駅からバスに揺られてストックホルム近代美術館(Moderna Museet)へ。外国のバスの乗降のやりかたが心配だったのだが、乗るときはSuicaとおなじ要領で読み取り機にカードをピッとかざし、降りるときはこちらも日本のバスとおなじようにボタンを押して知らせる。午前10時の開館少し前に、美術館に到着。自画像作品が印象的なNils Dardelというスウェーデン画家の企画展と常設展を見学してから、レストランで食事。それにしても北欧の画家はぜんぜん知らない人ばかりで、こちらが不勉強なのか、日本での紹介がなされていないのか。

島のなかにある美術館から海沿いに歩いて橋をわたり、目的のバス停に向かう。去年もこの道を歩いた。去年も今年も好天に恵まれ、美しいストックホルムの街並が目の前に広がる。しばし待っていると、バスがやってきたので乗車する。ここからバスで向かう先は、島の外れにあるThielska Galleriet。のはずだったのだが、途中、目的地まで向かうことなく市内に引き返そうな気配なので運転手に尋ねる。Thielska Gallerietに行くにはT69のバスに乗らなければならないのだが、乗ってしまったのは69のバスだったらしい。T69のバスに乗り換えなければならないと気が急いて降りようとすると、運転手に咎められる。いいから座ってろ、と言われてバスが動きだした。T69に乗るためのバス停まで運んでくれた。運転手は強面な雰囲気のおじさんだったけど、いい人だった。気をとり直してやってきたT69のバスに乗り、無事Thielska Gallerietに到着。

外国の美術館を訪れる愉しみとして、所蔵作品を鑑賞するのも勿論あるが、美術館の建物それ自体を味わうのも重要なポイントで、今回の旅で一番を挙げるとすれば、迷わずこのThielska Gallerietだった。美術コレクターである銀行家の私邸をギャラリーにしたその場所は、ここでバスという交通手段が仮に遮断されたら一体どうやって帰ったらいいのか途方に暮れるような周囲に何もない場所にあるのだけれど、訪れる価値がじゅうぶんある素晴らしい美術館だった。所蔵も、ムンクの作品が数多く展示されており、階段をのぼった小部屋の先にはニーチェのデスマスクが鎮座している。ハンマースホイの絵もひとつあった。

バスでふたたび市内へ。つぎの目的地は、事前に日本で確認したらGoogleマップでは建設中だったので最近できたと思われる美術館、Sven-Harrys。スウェーデンのファッションをめぐる展示(Swedish Fashion:2000-2015)を見学する。つづけて、少し歩いて、現代美術を展示しているらしいBonniers Konsthallに行ったら展示入替え中で休館だった。

夜、メトロでMedborgarplatsenに向かい、少し歩いてPelikanで夕食。ビールを一杯飲んだらそれまでの疲れがどっとでて、体調の行方がどうにも怪しくなる。有名なミートボールを注文するも、最初はおいしくパクパク食べていたのだが、量が多くて後半はやや苦行のようになってしまった。おいしかったけれど量が多い。