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Monday, November 5

パブロフの犬よろしく、永井均の名前を目にすれば条件反射的に「〈私〉」というキーワードが頭に浮かんでしまうのだが、『ウィトゲンシュタインの誤謬 『青色本』を掘り崩す』(ナカニシヤ出版)を読んだらそういう話でもなかった。ま、結局はそういう話なのかもしれないが。

パブロフの犬よろしく、大澤真幸の名前を目にすれば条件反射的に「第三者の審級」というキーワードが頭に浮かんでしまうのだが、『動物的/人間的』(弘文堂)を読んだらそういう話でもなかった。ま、結局はそういう話なのかもしれないが。

Tuesday, November 6

『装苑』十二月号(文化出版局)を読んだら「カップルたちの肖像」という短い特集記事が載っている。とりあげられている五組のカップルは、スコット・フィッツジェラルド&ゼルダ、ジェラルド&サラ・マーフィ、ガートルード・スタイン&アリス・B・トクラス、デヴィッド・ベイリー&ジーン・シュリンプトン、ジャック・ドゥミ&アニエス・ヴァルダ。原稿を書いているのは山崎まどか。ジェラルドとサラ・マーフィ夫妻については、フィッツジェラルドの小説『夜はやさし』のモデルとしてのほかに、カルヴィン・トムキンズ執筆の二人の評伝『優雅な生活が最高の復讐である』の存在もまた、よく知られているとおり。青山南が翻訳したこの『優雅な生活が最高の復讐である』は、数年前に新潮社が文庫化したけれど、単行本の佇まいが好きで所有するのであれば単行本のほうがいいと思いつつ、いまだ購入に至らず。版元はいまはなきリブロポート。単行本は東東京の古本屋でいちど見つけたのだが、古本としてはやや値が張るので躊躇して棚に戻してしまった。それから何度かおなじ古本屋をのぞくが、売れずにずっと棚に残っている。いくたびに、嗚呼まだあるのか、と確認している。なぜ誰も買わないのか、とじぶんが買わないことを棚にあげて思っている。

Saturday, November 10

ユーロスペースで『白夜』(ロベール・ブレッソン/監督、1971年、フランス・イタリア)を鑑賞。冒頭、主人公の青年が原っぱをでんぐり返しする淡々としたショットで、ああブレッソン! と思ってしまう。あわせてパンフレットも購入。「愛の新世界 1848/1968」と題された山城むつみの分析に感嘆しつつ、ところで、このたびの上映にあたりつくられたポスターが瀟洒なのにくらべて、パンフレットを彩るイラストがよくわからないポップさに満ちているのはなんだろうか。

「古道具、その行き先 坂田和實の40年」(松濤美術館)と「篠山紀信展」(8/ART GALLERY)に立ち寄ってから帰宅。

Sunday, November 11

近所のカフェで出版社PR誌一気読み。『みすず』(みすず書房)、『一冊の本』(朝日新聞社)、『UP』(東京大学出版会)、『図書』(岩波書店)。