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Monday, July 2

残業に時間を食われて思うように本が読めず、読書の神経が鈍麻している。夜、蛤とベーコンとほうれん草とミニトマトのパスタ、ビール。『シルビアのいる街で』(ホセ・ルイス・ゲリン/監督、2007年)を鑑賞。

Tuesday, July 3

『装苑』八月号(文化出版局)を読んでいると「カジュアルに着こなすクラシカルスタイル」というページに市川実和子が出ている。市川実和子と市川実日子は写真をみれば相貌の区別はつくものの字面だけでは固有名がどちらがどちらだったかしばしばわからなくなり、それだけれあればまだしも「実日子」という字面がどう読むのかわからなくなるという認識能力の低さ。

夜、白米、玉葱と人参とじゃがいもの味噌汁、鰺のひらき、キムチ、パプリカのハーブソルト炒め、ビール。

Wednesday, July 4

『芸術回帰論』(港千尋/著、平凡社新書)を読む。港千尋がこれまでさまざまな媒体に綴ってきたエッセンスを新書という体裁でまとめた本という雰囲気の書物。ところでそれぞれの自著で相手の書籍に言及しているので、実現すれば喜び勇んで見物に行きたいと思っている港千尋と堀江敏幸の対談だが、二〇〇七年と二〇一〇年に青山ブックセンターですでに実現していることが判明。「青山ブックセンター 堀江敏幸」でグーグル検索すると堀江敏幸がいろんな人と喋っている模様が窺い知れる。

夜、ラーメン、ビール。日々残業。

Thursday, July 5

残業。家に帰ると本を読むペースがうまいこと戻らないまま眠くなる。夜、白米、豆腐と葱の味噌汁、南瓜煮、胡瓜の中華風マリネ、鶏肉とパプリカの味噌照り焼き、ビール。

Saturday, July 7

雲行きが怪しいなか銀座のギャラリーを遊弋。メゾンエルメス八階で「クラウド・シティ トマス・サラセーノ展」とウィンドウディスプレイを飾る「マイケル・ヨハンソン/Memories of a Colour 色の記憶」、資生堂ギャラリーで「仲條正義展/忘れちゃってEASY思い出してCRAZY」、BLDギャラリーで「中平卓馬/サーキュレーション 日付、場所、行為」、ポーラ・ミュージアム・アネックスで「市橋織江/IMPRESSIONNISME」。こんなに人のたくさんいるポーラ・ミュージアム・アネックスははじめて見た(九割方は女性)。偶然にも中平卓馬も市橋織江も被写体はパリで、中平卓馬は一九七〇年代初頭のパリ、市橋織江は最近のパリ。作風はまるで異なる写真を同時に眺めながら、しかしながらどちらのパリも現在の旅行者の感じるパリとしてそれほど違和感がない。とりわけ中平卓馬の撮るメトロの駅風景などは、

交通機関のキャパシティが七〇年代以降あまり変わっていないのではないか。(『パリを歩く』、港千尋/著、NTT出版)

という分析そのものではないか。地下鉄で茅場町に移動して、森岡書店で「平出隆/FOOTNOTE PHOTOS展2 私へのオプティクス」を鑑賞。夕食の時間まで茅場町のスターバックスで『みすず』七月号(みすず書房)を熟読する。

フランスのモン・サン=ミシェルに行ったときに、とりたてて勇んで食べるほどでもないという前情報があったので名物である特大のオムレツは食べずに適当に入った店でサーモン料理を注文したのだけれどこれがとても美味しくて、やはり名物だからと無理してオムレツを食べなくても構わないという意見に一票入れたくなったのだが、観光客相手のオムレツがはたしてどんな味なのかは多少の興味はあって、有楽町駅ちかくの東京国際フォーラムにある暖簾分けなのかフランチャイズなのかラ・メール・プラールという店で本場のオムレツとおなじものが食べられるというので、パリ市内から四時間あまりかかる苦労を自宅から電車で十五分くらいで済ましてレストランに赴く。コースメニューでオードブルはスモークした地鶏のサラダ、メインはオムレツとムール貝のクリーム煮、デザートにコーヒーティラミスを恃み、ボルドーの白ワインを一本あける。注文するときにポテトフライかパンかどちらにするかを訊かれ、ベルギーとフランスの旅行でいくつかのカフェやレストランで食事をしたけれどあちらの国では頼んでいないのに問答無用でパンをもってくるし、そんなに食べられるわけがないじゃないかという尋常じゃない量のポテトフライをもってくる。しかしここは日本のレストランなのでポテトフライを注文したら小皿にのったきわめて常識的な量が出されて、そのあとのオムレツが結構なボリュームだったのでちょうどよいのだけれど、それにしてもベルギーとフランスの食べられるものなら食べてごらんよと挑発しているかのようなどうかしている山盛りぶりはなんだったのだろう。あとベルギーやフランスとのちがいでいえば、日本のレストランでは日本語がわりと通じる。

Sunday, July 8

災害に備えるがごとくヱビスビールとモルツを箱買いし、戦争に備えるがごとく近所のワイン専門店で赤白ワインを六本ほど。きのう銀座の資生堂で入手した『花椿』七月号と八月号を新装の表紙の写真はフィンランドの写真家アンニ・レッパラで、二〇〇九年の資生堂ギャラリーでの展示「ヘルシンキ・スクール写真展 風景とその内側」で観た人だった。夜、蛤とベーコンと小松菜とパプリカのパスタ、ビール。