01. Strawberry Fields Forever / OTOMO YOSHIHIDE’S NEW JAZZ QUINTET
02. 飲むのはやめとこう / 吾妻光良 & The Swinging Boppers
03. ボサ・ノバNo.1 / 東京キューバン・ボーイズ
04. ラムとコカ・コーラ / The Andrews Sisters
05. You Know I’m No Good / Amy Winehouse
06. わいわいわい / 小島麻由美
07. 初めての街で / 西田佐知子
08. ネコとアタシの門出のブルース / 二階堂和美
09. Drunk As Cooter Brown / Cassandra Wilson
10. 酒がのみたい / Burton Crane

1. Strawberry Fields Forever / OTOMO YOSHIHIDE’S NEW JAZZ QUINTET
大友良英率いるジャズ・カルテットがビートルズの名曲をカバーしています。大友良英(g)、菊地成孔(ts, ss)、津上研太(ts, ss)、水谷浩章(b)、芳垣安洋(ds, tp)と達者なメンバーが集まった演奏なのに、奏でられた音楽は酔っぱらっているようにしか聴こえません。

2. 飲むのはやめとこう / 吾妻光良 & The Swinging Boppers
吾妻光良は「日本テレビの執行役員」という肩書きをもっていた人ですが、ステージでは気負いのない陽気なおじさんです。安心の歌唱力と話芸。ライブでの演奏も大抵飲みながらやってます。バンドメンバーはほぼ全員、ふつうのサラリーマン。

3. ボサ・ノバNo.1 / 東京キューバン・ボーイズ
半世紀以上前に結成された日本を代表するラテンバンドが「ボサ・ノバ」を聴かせます。ラテン音楽を日本流に咀嚼したひとつとして。なんとなく昭和のキャバレーにいるような雰囲気に浸れます。

4. ラムとコカ・コーラ / The Andrews Sisters
1940年代から50年代にかけてヒットを飛ばした女性三人組のボーカルグループ。曲名はホワイトラムをコカ・コーラで割って、ライムをひと切れ添えたカクテル「キューバ・リブレ」に由来します。

5. You Know I’m No Good / Amy Winehouse
薬物中毒とアルコール依存症によって昨年世を去ったエイミー・ワインハウス。飲むのもほどほどに。生前に発売されたアルバムはたった二枚だけですが、アルバム「Back to Black」は歴史に残る珠玉の傑作です。

6. わいわいわい / 小島麻由美
天才と天然は紙一重といいますが、この科白は小島麻由美にこそふさわしい。彼女の「言語感覚」は特筆に値すると思います。十年ほど前、このマキシ・シングルが発売されたときはおののきました。わいわいわい。天才でしょう。

7. 初めての街で / 西田佐知子
西田佐知子のいちばんのヒット曲は「コーヒールンバ」でしょうが、飲み屋に似合う曲もたくさん唄っています。初めての街で、いつもの酒。作曲は中村八大で作詞が永六輔と、手掛けたのは「上を向いて歩こう」のコンビです。

8. ネコとアタシの門出のブルース / 二階堂和美
二階堂和美のライブは必見です。この曲も録音で聴くのもよいですが、実際に生の歌声を前にしたほうが痺れます。とりわけ「子ども? いないわよ」というフレーズのところ。カフェをやっていた二階堂和美の友人が、お店を閉めるということから着想を得てつくった曲とのこと。

9. Drunk As Cooter Brown / Cassandra Wilson
存命の女性ボーカリストでいちばんは誰か? と問われれば、カサンドラ・ウィルソンの名を挙げたいです。至芸。タイトルにある「Cooter Brown」は南北戦争時代のアメリカ人の名前で、徴兵を逃れるために戦争の間ずっと酔っぱらっていることにしたそうです。われらが Cooter Brown !

10. 酒がのみたい / Burton Crane
元祖・外国人タレント、バートン・クレーン。宴席の余興でカタコトの日本語で唄っていたらコロムビアレコードの社長にスカウトされたとか、この人をめぐるエピソードはいろいろと要調査。

* * *

「これまで季節に応じて楽曲を選んできたこのコーナーですが、今回は趣向を変えて「酩酊篇」です」

「変わりすぎですよ」

「酔いどれ音楽全十曲ということでライナーノーツもどきを書いてみたのですが、一番聴いてもらいたいのは1曲目の「Strawberry Fields Forever」。これはぜひ音源を確認してほしい曲です。ほとんど出オチ」

「ほんと出オチですよ、これ。今回わたしは一曲だけ選ばせてもらいました。バートン・クレーンの「酒がのみたい」」

「なぜそれを選んだのかを、ぜひ」

「友人が「あなた、きっと気に入るよ、これ」って貸してくれたんです。バートン・クレーン、日本語と歌の上手さに驚きましたが、Wikipediaでプロフィールを調べて二度びっくり。プリンストン大学卒のジャーナリストなんですね。ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルの東京特派員として来日。宴会の余興で歌った歌にコロムビアレコードの社長が目をつけて歌手デビュー。経歴がおもしろすぎです」

「この人、Wikipediaに載ってる情報だけでじゅうぶんおもしろいので、今度ちゃんと調べてみましょう」

「選曲一覧をみたらThe Andrews Sistersの「ラムとコカ・コーラ」が入ってる! これほんとにいい曲ですよね。数年前にベルギーのアントワープを旅した時、真っ昼間からバーに入って注文したのが「キューバ・リブレ」でした。バーテンダーに「この街のおすすめはどこ?」って聞いたら「特にない!」って言われて……」

「ないんだ」

「彼のやる気のなさがわすれられなくて。以来いちばん好きなカクテルは「キューバ・リブレ」になりました。それにしても今回の選曲って、お酒に似合う音楽というわけじゃないですよね……」

「聴いてると酔っぱらってくる音楽かも。飲める人も飲めない人も平等に酩酊へと誘います」

「サトウ・ハチローがバートン・クレーンの「酒がのみたい」を聴いて「この歌は歌そのものが泥酔している」という名言を残したとか残さなかったとか。この言葉、ピッタリでは?」

「では飲む前に飲まれる、悪酔い必死の選曲集をどうぞ」

2012年1月某日 某酒席にて ( 文責:capriciu )