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Monday, July 15

おととい、きのう、きょうと朝、身体が怠くて仕方ない。一度4時半に目覚めるも、起き続けていられない。洗濯機をまわしながらベーグル、ヨーグルト、珈琲の極めてシンプルな朝食をとったあと、こまごました整理整頓を済ませてきょうも図書館へ(地元だけど)。ついでに食料・日用品の買い出し。この買い出しにきょうはあと2回行かねばならない。帰宅してちょっと休んで2回目の買い出しへ。道行く女の人のほとんどが日傘をさしている。近くの焼肉屋で石焼ビビンバを食べてから、あれこれ食材を買って帰宅。15時過ぎたあたりから時間が坂道をコロコロと転がり落ち、あっという間に訪れた夕暮れを見ながら、きょうはもう何もやる気がおこらなかった。もう3カ月くらいずっと、やらなきゃなー、と思っていることになかなか手をつけられないでいて、落ち込む。夜になって涼しい風が吹いた。あしたは少し気温が下がるだろうか。

Wednesday, July 17

原因は不明だけれど、胃腸がキューッと硬直し、手足がビリビリ痺れるような感覚に陥り、吐いてしまった。嘔吐。なぜいまサルトル。(ベタすぎ)

Thursday, July 18

週末からずうっと続いていた朝の不調が嘘のように、今朝は良い目覚め。きのうは体調が最悪でもうどうしようもなかったというのに、身体がふうわり軽い。午前4時半、ベランダに出るとひんやりした外気に包まれた。それでもきょうは暑くなるらしい。

夜は、バゲット、ソーセージ、サニーレタスときゅうりとトマトのサラダ、ザワークラウト、ビール。食後に赤ワイン。胃の具合が万全ではないため、少し残してしまって悲しい。食べ物を残すことには相当な罪悪感をおぼえる。『クウネル』9月号(マガジンハウス)が届いたので集中して真剣に一気読みしたら、ひどく疲れてしまった。クウネルくんはそんな読み方求めてない。

Friday, July 19

今朝は再び眠くて怠くてちょっと苦痛に感じるくらいだった。やはり今週はあまり体調がよろしくないなあ。そろそろ会いたい人に会ったりビアガーデン行ったり外向きに過ごしたいのだけどなあ。

『時の光』(河野道代/著、crystal叢書/Tokyo Publishing House)を読み終える。友人のSさんがこの春、この本について、リリシズムと厳しさが絶妙なバランスのうちに漂う書評を執筆し、その書評が掲載されたSPIRAL RECORDSとcrystal叢書が発行しているフリーペーパーをご本人直々に送っていただいたことが導線となって読むことができた。まず最初の章で、作者は、

わたしはことさら意図もなく、時の光と等しい視線となって、折々に眼に入るものを書き留めてみようと思う。静かな眼がわたしにあると言うのではない。見られていることを知らずに現れたものが、わたしの眼を静かな光で満たすだろう。そのようにして、わたしもまた風景となっていくのだと思う。(風景)

と静かに宣言する。読者はその言葉どおり、ただただ文字を追っていくだけでいい。少なくともわたしは、ただただ文字を追っていくだけでこの上なく幸せだった。

うららかな春の日、庭に出て、若葉を抜けてきた光の揺らめきに浸されていると、どこかそれほど遠くはない高みから、澄んだ大気を裂いて、大気よりも透明なひとすじの旋律がくるめき落ちる。(玉響)

どうしたらこのような文章が書けるのか。ちなみにほぼ3〜4頁でひとつの章立てになっているが、各章は皆、漢字二文字の題名が付けられている。これから幾度も幾度も読み返す一冊になるだろう、と、そう思うことはとても嬉しい。

Saturday, July 20

今朝は肌寒く、開け放した窓のそばに座っているとたちまち身体が冷えてくる。でも今朝、やっと今年初めて蝉の声を聴いたのだった。窓のそばで『若きウェルテルの悩み』(ゲーテ/著、高橋義孝/訳)を読んだ。

朝、ハイジの白パン、サニーレタスときゅうりと玉ねぎのサラダ、ヨーグルト、珈琲。きょうは洗濯機(洗濯槽)の漂白をしようと、朝8時頃から洗剤を入れて槽洗浄コースでまわし始め、4時間程度で済むだろうと考えていたら、説明書を読んだら11時間かかると書いてあった。11時間! そんなにかかるだなんてすっかりわすれていた。予定していた時間に出かけられないではないの! 時間になったら終わるのだから放っておけばいいという意見もあるが、わたしは心配性のため、どうしても洗濯機の水道の蛇口を開けたまま外出するということが恐くてできないのだ。ああ、土日の予定が狂ってしまった。とはいえこの土日は奇跡的に、絶対的な予定がなかった。九死に一生を得た気分だ。気を取り直してにんじんや茄子やじゃがいもをホカホカ蒸したり鮭ほぐし入りポテトサラダをこしらえたりした。ときどき思い出したようにくるくるまわる洗濯機の音が聴こえてくる。

『波打ち際に生きる』(松浦寿輝/著、羽鳥書店)を読む。前半部分が東京大学退官記念講演で、初出時の『文學界』で読んでいるが、後半の最終講義「Murdering the Timeー時間と近代」はまだ未読で、たいそう面白かった。『不思議の国のアリス』を起点に近代的な時間システムについて論じたもので、そのシステムに反撥する心性の祖型となるものが『アリス』のなかに現れている、として、ハートの女王が、“kill time”という表現を前提に「あの男は時間を殺害しているーHe’s murdering the Time!」と叫ぶ場面が取り上げられているのだけど、これを読んで即座に思い出すのはおおひなたごうの漫画『おやつ』の第4巻でおやつのパパがひょんなことから「時間の国」に紛れ込んだところ、そこはまさに時間に厳しい国で、時間にルーズなパパは完全に落ちこぼれてしまって、逆ギレして時間の国を滅亡させて現実界に帰ってきたのだが、その時間の国を潰す手段が「パチンコしたり釣りしたりして時間を潰したんだ!」というオチで、これを初めて読んだときは「時間を潰す」という概念の横すべりっぷりに震撼したものだった。最終講義は、松浦寿輝が吉田健一『時間』の一節を読み上げて幕を閉じるのだけれど、ここでけっこうぐっときてしまった。

ついでに『おやつ』第4巻を全部読んでしまってクククと笑ったりしていたのだけれど、まだまだ洗濯槽洗浄は終わらない。お腹もすいてきた。山田宏一の写真集『Nouvelle Vague』をまたもゆっくりじっくり眺め、雑事を片付けていたらやっと終了のピ〜が鳴ったので家から歩いて15分くらいのところにある美味しいと評判のラーメン店に出かけてチャーシュー麺を食べ、スーパーで買物をした。美味しいと評判のラーメン店はたしかにとても美味しく、客も大入り満員で、接客も丁寧で明るくて親切で気持ちがよかった。けれど非常に濃厚な味で(豚骨ベースだった)、スープの表面に浮かぶ脂をじっと見つめているだけでお腹が膨れていくようで、当分ラーメンは要りません。

Sunday, July 21

朝ごはん、バームクーヘン、目玉焼き、ベーコン、サニーレタスときゅうりと玉ねぎのサラダ、ヨーグルト、珈琲。

紀伊國屋レーベルがDVD40%割引セールだか何かをやるのを知って、また散財しそうだと行くのを躊躇っていたのだけどやっぱり行ってしまった。ペドロ・コスタ「あなたの微笑みはどこに隠れたの?」と「ジャック・ロジエ DVD-BOX」を買った。ジャック・ロジエ(いつもロジェと書いてしまうのだけどロジェではないのかな)のBOXセットには「オルエットの方へ」、「メーヌ・オセアン」、そして短編作品の「ブルー・ジーンズ」「パパラッツイ」「バルドー/ゴダール」が入っていて、これからは観たいときにいつでも「メーヌ・オセアン」が観られる。夏のうちに一度は観ておこう。

沖縄料理のお店で、沖縄そば、じゅーしー、もずく、ラフテー、トロトロ軟骨ソーキ、刺身、ミミガー、サーターアンダギーの御膳とオリオンビール。久しぶりの沖縄料理、美味しい。そののち東急ハンズでスーツケースを購入。いま持っているのが巨大すぎるので、小ぶりのものを。それほど疲れるようなことはしていないのに、ぐたぐたに疲れて帰宅。少しだけ転寝。お気に入りのカフェに行ってアイスコーヒーを飲みながら『考える練習』(保坂和志/著、大和書房)を読んで、いつもの花屋でオーニソガラム サンデルシー、バラ、何かの葉っぱ(名前訊くのわすれた!)を買う。近所をぐるぐるまわってあといくつか用を済ませる。帰り道、自宅マンションの上に白い月が浮かぶのが見えた。

夜は、蒸し茄子のおかかポン酢がけ、卵焼き、鮭入りポテトサラダ、たたききゅうりの甘酢あえ、にんじん・キャベツ・油揚げの蒸し煮など酒のつまみをずらりと食卓に並べ、選挙結果をTwitterのタイムラインで確認しながらビールを飲む。