
Monday, August 17
曇りのち晴れ。朝食、半熟玉子、鶏肉のグリルとマスタード、ベビーリーフと紫玉葱とトマトとブロッコリーのサラダ、キャロットラペ、ミルクブレッドとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。
読書。水村美苗『私小説 from left to right』(ちくま文庫)を読む。昼食、弁当。夕食、蛸とサーモンとキャベツのバーニャカウダパスタ、サンペレグリノ。日中の最高気温は30度に届くものの、朝晩は過ごしやすい今夏の刻。映画鑑賞。『鎧戸の締まった家』(D・W・グリフィス/監督、1910年、アメリカ)を見る。
ハーゲン弦楽四重奏団によるモーツァルト「弦楽四重奏曲集《ハイドン・セット》」を部屋に流しながら、週末に訪れる予定の軽井沢に縁のある文学に触れようと、水村美苗の小説を順繰りに読み返す。軽井沢で想起するのは、堀辰雄でもなく、室生犀星でもなく、水村美苗。『本格小説』(新潮文庫)の上巻を手にとる。
Tuesday, August 18
朝食、半熟玉子、鶏肉のグリルとマスタード、ベビーリーフと紫玉葱とトマトとブロッコリーのサラダ、キャロットラペ、ミルクブレッドとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。
「静かな退職(Quiet Quitting)」という語彙をメディアで目にする機会が最近増えているが、「日本経済新聞」朝刊の「経済教室」でも、解消すべき「問題」として取りあげられている。会社を辞めずに働き続けるものの、職務範囲だけを淡々とこなし、積極的な提案や進言を回避するような働き方だと定義されるのであれば、こちらとしては、大学卒業後に就職してから一貫して「静かな退職」を選択してきたことになる。
読書。水村美苗『本格小説』(新潮文庫)の上巻から下巻へ。昼食、弁当。夕食、豚肉と菠薐草と揚げ玉を添えた素麺、和紅茶。
Wednesday, August 19
朝食、半熟玉子、鶏肉のグリルとマスタード、ベビーリーフと紫玉葱とトマトとブロッコリーのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。
読書。水村美苗『本格小説』(新潮文庫)の下巻を最後まで。つづけて、水村美苗『母の遺産 新聞小説』(中公文庫)の上下巻に手をのばす。昼食、弁当。夕食、蛸とサーモンとキャベツとしらすのバーニャカウダパスタ、サンペレグリノ。
Thursday, August 20
朝食、半熟玉子、鶏肉のグリルとマスタード、ベビーリーフと紫玉葱とトマトとブロッコリーのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。
本日は残暑らしい残暑。駅のホームで電車を待つ時間の数分ですら、陽射しが厳しく堪え難い。読書。水村美苗『母の遺産 新聞小説』(中公文庫)の下巻を読む。昼食、弁当。夕食、サーモンと菠薐草としらすのアルフレッドソースパスタ、和紅茶。
読書。水村美苗『日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で』(ちくま文庫)を読む。刊行当時に話題を呼んだ本だが、いくら世人の目を惹いても、その内容が継続して議論されるわけではない現実を見せつけられる。水村美苗の所説に必ずしも全面的に賛同するわけではないのだが、つぎのくだりなどは、思案の価値を失っていないはずである。しかし、世の中の言説を見わたせば、日本の現代小説が英国でベストセラーになっているなどの通俗的な喧伝が目につく程度でしかない。
実際、すでに、〈叡智を求める人〉は、今の日本文学について真剣に語ろうとは思わなくなってきている。今の日本文学について真剣に考察しようとは思わなくなってきている。だからこそ、今の日本では、ある種の日本文学が「西洋で評価を受けている」などということの無意味を指摘する人さえいない。言葉について真剣に考察しなくなるうちに、日本語が西洋語に翻訳されることの困難さえ忘れられてしまったのである。近代に入り、日本語は西洋語からの翻訳が可能な言葉に変化していく必然性があった。日本語で読んでも西洋語の文学の善し悪しがある程度はわかるのはそのせいである。ところが、西洋語は、そのような変化を遂げる必然性がなかった。西洋語に訳された日本文学を読んでいて、その文学の真の善し悪しがわかることなど、ほとんどありえないのである。わかるのは主にあらすじの妙であり、あらすじの妙は、文学を文学たらしめる要素の一つでしかない。
Friday, August 21
晴れ。朝食、半熟玉子、鶏肉のグリルとマスタード、ベビーリーフと紫玉葱とトマトとブロッコリーのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。
酷暑でも猛暑でもないが、不快な蒸し暑さがつづく。昼食、弁当。夕食、豚肉と茗荷としらすと揚げ玉を添えた素麺、和紅茶。読書。水村美苗『無駄にしたくなかった話』(筑摩書房)を再訪。水村美苗の活写する岩井克人の姿はいつもコミカルで、文化勲章なるものを受章する人物には見えない。
フランス語もできなければ──本人は少しはわかると主張しているが──英語も上手とはとても言いがたい岩井は、自分の語学能力の貧弱さを補うため、「ヴェリー、グッド!」「オー、ワンダフル!」「ソー、ビューティフル!」としきりに連発し、もう少しは気の利いたことを言えないのだろうかと私は内心困惑していたが、O氏いわく、イーアンはたいへん喜んでくれたそうである。
「ミナエのハズバンドは何を見ても感銘を受けてくれる!」
ありがたいことであった。
Saturday, August 22
掃除と洗濯。朝食、半熟玉子、鶏肉のグリルとマスタード、ベビーリーフと紫玉葱とトマトとブロッコリーのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。
バスに乗って近場を遊弋。図書館で本の返却と貸出。最寄りの「スターバックス」にて、エスプレッソアフォガートフラペチーノを飲む。「東急ストア」で本日分の食料品を買う。「マツモトキヨシ」で薬や日用品を買う。自宅に戻って、昼食。サンドイッチ、紅茶(アールグレイ)。ラジオを聴きながらアイロンがけ。読書。水村美苗『大使とその妻』(新潮社)の上巻を読む。夕方、剣呑な天気になる。雨雲が押し寄せて、断続的に雷鳴が轟く。東京に「大雨警報」がでる。
夕食、鰻重、絹ごし豆腐と茗荷の味噌汁、桃、焙じ茶。『& Premium』10月号(マガジンハウス)を読む。
Sunday, August 23
丑三つ時に関東地方で震度5弱の地震。午前4時起床。朝食、半熟玉子、鶏肉のグリルとマスタード、ベビーリーフと紫玉葱とトマトのサラダ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。
東京駅から北陸新幹線「はくたか」に乗って、軽井沢を目指す。午前9時前の軽井沢駅周辺は、靄のかかる曇天模様。駅構内施設の手荷物預かりサービスを利用し、スーツケースを預ける。「浅間国際フォトフェスティバル」が実施されて以降、毎夏軽井沢を訪れる習慣ができあがったが、軽井沢の風景は少しずつ変容している。昨年は存在しなかった「軽井沢T-SITE」が駅前に屹立している。今年3月から交通系ICカードの利用が可能となったしなの鉄道に乗って、御代田駅まで。
天気予報どおりの厚い雲の覆う軽井沢駅から御代田駅に向かうと、一転して快晴。今回の旅の主目的である「浅間国際フォトフェスティバル」を見学する。湿気はないものの陽射しは厳しいので、屋外展示を廻る際は日傘を差しての防御体制。会場となっている複合施設「MMoP」の飲食店が今年から様変わりしたのだが、そのうちのひとつ「tsubu.」にて昼食を摂る。
しなの鉄道で軽井沢駅まで戻り、駅北口の「軽井沢T-SITE」を訪問。「LE CHOCOLAT DE H」でソフトクリームを食べる。「SHOZO COFFEE STORE KARUIZAWA」「わざマート軽井沢店」「だし尾粂」に立ち寄る。南口に移動し、いつもどおり多くの人で賑わっている「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」を瞥見してから、送迎バスに乗って本日の宿泊先である「万平ホテル」に向かう。チェックイン。選択した部屋のタイプ「碓氷館」は、建物の離れに位置し、緑豊かな景色を望む。夕食までの時間、森閑としたテラス席で、水村美苗『大使とその妻』(新潮社)を読む。
その晩、篠田氏も飲めるように荻原さんの車を呼び、向かったのは万平ホテルにあるメイン・ダイニングであった。荻原さんは隣りに乗りこんだ私に向かってキャップを上げるとそのあとは緊張した面持ちでまっすぐ前を向いてハンドルを握っていた。誰も口を利かないせいか、微かな匂いなのに香の匂いが車に充満してくるような気がした。
軽井沢でもっとも旧いホテルだというのと、広いのでほかの客の存在が気にならないだろうというのとで、万平ホテルのレストランに行くのを提案したのは私であった。荻原さんと同じようにまっすぐ前を向いているうちに次第に責任を感じ始め、今まで食べた料理を思い出そうとしていた。何一つ思い出せない。特徴がないのが特徴的だった料理のような気がする。
私は後ろを振り向いた。
「It’s boring French cuisine, the kind Japanese hotels typically serve」
どうっていうことのないフランス料理で、日本のホテルでよく出てくるようなもんなんですけど──
晩餐はホテル内のレストラン「メインダイニングルーム」にて。こちらは「万平ホテル」初心者なので、『大使とその妻』の主人公のように斜に構えることなく、食事を愉しむ。高原野菜サラダ、和牛のシチュー、ライス、ノンアルコールの白ワイン。フランス料理のコースは大抵、量が多すぎて苦しくなるのでアラカルトで注文したのだが、しかし周囲に着席する高齢者たちは皆、コース料理を口に運んでいる。