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Wednesday, April 29

ロジャー・パルバース+四方田犬彦『こんにちは、ユダヤ人です』(河出ブックス)を読み終える。今年の『みすず』読書アンケート号で酒井忠康さんが挙げなければ存在を知らなかった一冊。面白かった! 二人とも、自らの出自や体験、リアリティのある知見に即した、実際的な話に終始していたのがよかった。

夜は、『ホーリー・マウンテン』(アレハンドロ・ホドロフスキー、1973年)を観る。前半のトンデモな展開と映像から、山に登る段になって突如、高精細カメラで撮った自然派ドキュメンタリーみたいな映像に変わって可笑しかった。特典映像を見て、その空の青さや山のあおあおとした緑は、デジタル修復技術の賜物だと知った。思わず吹いてしまったのは、主人公の男がお酒をがぶ飲みさせられている時、周りはたぶん「drink!drink!」と囃し立てていたのだと思うけど、その字幕が「イッキ!イッキ!」だったこと。

Thursday, April 30

『ぽかん』5号が届いた! あまりの早さにびっくり。今回、付録「のんしゃらん通信」に書かせてもらったのだけれど、書いたという実感はあまりなく、いつもの魅力的な執筆者の方々がずらりと並んだ目次を見て、うっとりとため息をつくばかり。ワインでも飲みながら、大切にゆっくり読もう。

Saturday, May 2

お昼は飯田橋のカナルカフェに食べに行く。行ってみたら長蛇の列で呆れる。まあ混むだろうとは思っていたけれど。開店前に並ばなくてはいけないのは鎌倉のオクシモロンだけではなかった。入れるだろうかと不安になりながら並びつつも、デッキスペースで過ごしたい人もけっこういるだろうし、なんとかなるはず、と思って待っていた。そしたらあっさり入れて、おまけにお店に入っても半分くらいは空席で、座席数が多いのだった、ここは。テラスではなくサンルームに陣取ったら、目の前には水が広がり、明るくて、でも風は直接あたらず、とても快適だった。パン、サラダ、茄子とズッキーニのトマトソースパスタ生ハムのせ、赤ワインをいただく。サラダはいつもとても美味しい。生ハムとパスタももちろん美味しい。

ミヅマアートギャラリーで、「青山悟展 名もなき刺繍家たちに捧ぐ」を観る。今回の作品は、「イタリアの前衛グループであるアルテ・ポーヴェラの一員として知られるアリギエロ・ボエッティの刺繍による世界地図作品、“Mappa”に対するオマージュとして長年構想していたもの」。この“Mappa”という作品は、ボエッティが、カブールのホテルに刺繍家である職人たちを集めて、作品のコアとなる部分までも職人たちの創造性にまかせて製作させたものであることから、果たして芸術作品といえるのか、単なる工芸品に過ぎないのではないか、といった物議を醸した経緯があるとのこと。そこから、工業ミシンで作品を生み出し続けている青山悟はあらためて、アートとクラフトの関係を考察したのだった。モチーフとしては、その、カブールのホテルで黙々と刺繍をし続けた、文字通り“名もなき”刺繍家たちに焦点があてられており、さすが、青山悟、といった美しさと叙情性に満ちた作品に仕上がっていた。ひとつの展示室では、照明によってある仕掛けが浮かび上がる演出がなされていて、興奮した。この人の作品を観るといつでも、わたしはなんともいえない高揚感に包まれてしまう。

ギャラリーを出て、散歩がてら日仏学院(アンスティチュ・フランセ)に寄ると、レストランの脇に咲いていたモッコウバラが見頃を迎えていた。早稲田通りを延々歩き、目当てのかもめブックスとla kaguをひやかす。la kaguの2階に、トークショースペースと思しき場所があり、そこには小学校の教室にあったような椅子がたくさん並んでいて、可愛かった。疲れた脚を休める。la kaguはそれほど悪いとは思わないけれど、かもめBOOKSのほうは相当ゆるふわだったなあ。ちょっと本が少なすぎでは。

帰宅後、あしたのピクニックのお弁当に、ほうれん草とツナのキッシュ風オムレツ、ポテトサラダをつくっておく。

Sunday, May 3

きょうは代々木公園でピクニックをとり行う。芝生の上にお弁当をひろげる。ハムとポテトサラダを細長いパンに挟んだサンドイッチ、ハムとアボガドとチーズのサンドイッチ、ピクルス、ほうれん草とツナのキッシュ風オムレツ、サニーレタスとにんじんとミニトマトのサラダ、ウィンナーとミニトマトの串焼き。赤ワインもあける。つくづく、ピクニックの楽しみの半分はお弁当づくりにあると思う。たくさんつくって、わーっとひろげるのが好きなのだ。ひろげたら、食べて、消えてしまう。寂しいけれど、それも良しだ。しかし今回、量は十分だが品数がものたりない。あと3品くらいつくればよかった。少量ずつたくさん食べたい、というこの願望、ザ・女子、という感じ。徐々に空の頂上をめざしてのぼってくる太陽の光を避けて避けて、途中、何度かラグを引いてずらして日向を避けて、さすがに避けきれなくなってさらに涼しい木陰に移動した。きょう持ってきた本はジョゼフ・ケッセルの『ライオン』。もう5冊も6冊ももってくるのはやめたんだ、読めもしないのだから重いだけだ。読書もそこそこに、オセロを2戦、1勝1敗。15時頃、撤収。ここへはまた再来週、来るつもり。

園内をぐるっとまわって帰る。歩きながら、日本にもこんなピースフルでカオスな場所があるんだなあ、それにしてもピクニック人口ってどのくらいいるんだろう、と考える。子どもの頃、週末になると家族みんなでお弁当を持って砧公園まで遊びに行ったことは、いつまでもわすれられない楽しい記憶だ。

相変わらず絶望的な混雑を極める山手線原宿駅の改札を抜けてホームに降りる。ホームに降りると途端に人が少なくなってなんだか笑える。2分おきくらいにやって来る山手線が次々と乗客を運び、人口を散らす。