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Monday, June 1

5時起床。月曜日の朝はぐったりと疲れ、そして頗る眠い。カレンダーを、休日が土日しかない6月に切り替える。国民の祝日に関する法律の一日も早い改正が待たれる。

少しの残業。夜、あさりとズッキーニとウインナーの白ワイン蒸し、目玉焼きをのせたグリーンリーフと新玉ねぎと黄パプリカのサラダ、バゲットとレバーペースト、白ワイン。

美奈子アルケトビ『砂漠のわが家』(幻冬舎)を読む。朝早く起きると夜眠い。

Tuesday, June 2

夜、安くて美味しい近所のカフェで夕食。

小林敏明『柄谷行人論 〈他者〉のゆくえ』(筑摩選書)を読了。読み進めながらいろいろと思うところあるが、わたしにとって柄谷行人の魅力はその「放言」にあり、たとえば雑誌『批評空間』の討議なんかで印象に残っているのは彼の放言の数々で、喋りにおける放言がそのまま地滑り的に書きものにおける放言にもつながっているのかは何とも言えないところだが、つまるところ柄谷行人の言説というものをエンターテインメントとして受けとってきた。エンターテインメントという言葉の響きがもつ明るさとは正反対の暗さも抱えていることを承知しつつ。柄谷行人の、ほとんど直観から導き出されているかのような卓抜な逆説やアナロジーや断定といったものは、厳密な論理構成や実証を重視する人の神経を逆撫でしてきたわけだが、とても魅力的なエンターテインメントだと個人的には映ったからか、あまり反感をもつことなくこれまで彼の仕事を読んできた。

本棚から『日本近代文学の起源』(講談社文芸文庫)を抜きだして、再読している。

Wednesday, June 3

『みすず』6月号(みすず書房)が届く。

夜、わかめごはん、かぶの葉とわかめの味噌汁、焼き魚(かれい)、長ねぎと生姜の冷奴、キムチ、きゅうりの中華風胡麻和え、ビール。

Thursday, June 4

衆議院憲法審査会で与党が推薦した長谷部恭男が集団的自衛権の行使容認は憲法違反だと明言していて笑いそうになってしまったのだけれど、そう言うに決まっている人を呼んで与党は何がしたかったのだろう。特定秘密保護法案に好意的だった長谷部恭男は集団的自衛権の行使容認にも賛成してくれると勘違いしたのかもしれないけれど、そうであれば長谷部恭男の所説に目を通していない愚かにもほどがある人選だが、報道によると自民党は衆議院法制局に人選を一任したらしいので、法制局が悪意をもって選んだ可能性もある。もしそうであれば、わたしはその悪意を支持したい。

夕食は、グリーンカレー、新玉ねぎとグリーンリーフのサラダ、ビール。夜、ケイト・ブランシェットの演技力で全編を押し通すような映画、『ブルージャスミン』(ウディ・アレン監督、2013年)を見る。

Friday, June 5

会社近くの図書館で『TANGE BY TANGE 1949-1959/丹下健三が見た丹下健三』(豊川斎赫/編、TOTO出版)を借りたのだが、本のサイズがでかすぎて鞄に入らない。もって帰るにはサブバッグが必要だが重すぎて運ぶ気力がでない。仕方がないので、会社の昼休みに自席ででかい本を読んでいる。

帰宅時間に豪雨。夜、かぶと小松菜とベーコンのパスタ、赤ワイン。iPadで『エコノミスト』誌を読む。

Saturday, June 6

東京藝術大学大学美術館で開催中の「ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし」を見るために上野へ。昨夏、トーベ・ヤンソンの展覧会を目当てに訪れたヘルシンキのアテネウム美術館で、ヤンソンの作品にも増してふかく印象に残ったのは常設展示でのHelene Schjerfbeckの絵画作品だった。ネットで検索しても日本語の情報は少なく、英語版のWikipediaを読むとフィンランドを代表する女性画家のようだが、そもそも「Schjerfbeck」という名前をカタカナでなんと表記すればいいのかわからなかった。北欧の画家は日本であまり知られていない(わたしが知らない)ので、ヴィルヘルム・ハンマースホイのようにいつか紹介されれば思っていたら、ハンマースホイのときと同じ企画者(東京藝術大学准教授の佐藤直樹)によって、展覧会が開かれるはこびとなった。ヘルシンキのアカデミア書店で見つけたシャルフベックの高価な画集を買おうかどうか少し迷って、結局買わずに日本に帰ってきてやっぱり記念に買っておけばよかったかなと思ってから間もなく、日本で図録が買えるなんて予想もしなかった幸甚。

上野公園のPARK SIDE CAFEで森のガーデンサンドと赤ワインの昼食。

銀座線で表参道に移動し、ラットホールギャラリーでジム・ランビー「Sun Rise Sun Ra Sun Set」を鑑賞。つづけて、スパイラルでミナ ペルホネン20周年を記念しての展示「ミナカケル」へ。会場入口付近に皆川明がいてサインに応じていた。

ポール・スミスのギャラリーでフランク・ボーボ「SWIMMING POOL」を見てから、国連大学前のファーマーズマーケットを少し覗いて、青山ブックセンター。

歩き回って疲れたので、cocotiの347カフェで休憩。ヒューガルデンホワイトを注文。飲食店に入るたびにアルコールを摂取するのが疲れを倍加する原因のような気もするが、気にしないようにしたい。休憩後、TOMORROWLANDとBEAUTY & YOUTHを覗いて洋服を物色してから帰宅。小雨に降られる。

夕食をつくる体力と気力がなくて、近所のカフェに直行。

大平一枝『東京の台所』(平凡社)を読む。台所についての本というより、その台所を使う人の人生模様を活写した本。この本に出てくる台所は、マガジンハウスの雑誌にでも載りそうなセンスあふれた台所はほとんど出てこない。つまりは「普通の人」の台所が登場する。しかし「普通の人」ほど奇天烈な存在はないとあらためて思い知らされるところがあって、いちばんすごいと思ったのは、立派なキッチンつきの都内の賃貸マンションに住んでいる独身中年女性は、台所用品や食器が好きでいろいろと購入し、料理本も揃え、レシピのスクラップまでしているのに、一切料理をしないというものだ。コンビニの食事でいいという。意味がわからなすぎて、すごい。

Sunday, June 7

朝、目玉焼き、小松菜とベーコン炒め、バゲットとレバーペースト、珈琲。きのう本屋で買った若山曜子『作りおきできる フレンチデリ』(河出書房新社)を参照して献立を考えつつ近所のスーパーに向かう。お昼は、ひやむぎとビール。本を参考につくった、たことセロリのガーリックオイル和え(レシピを逸脱し、勝手にアレンジして新玉ねぎと水菜を加える)も一緒に。

午後、東京藝術大学大学美術館で購入した展覧会カタログ『ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし』(求龍堂)をじっくりと読む。今回の展覧会の企画者である佐藤直樹の論考「「枕の時代」 シャルフベックの《快復期》に見られる病床画の系譜とイギリス美術の影響」を読んでいたら、画家が母親に宛てた手紙からの引用で「私たちは女子会をするのです」と訳された一節があるのだが、原文はどうなっているのだろう。

夜、ローストチキン、生鰹のコンフィ、たことセロリのガーリックオイル和え、キャロットラペ、バゲットとレバーペースト、赤ワイン。