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Saturday, December 20

夕方になり、本格的に雨が降り出す。冬の雨はとりわけ気が滅入るからやめてほしい。

安野モヨコ『くいいじ』(文春文庫)を読む。良いエッセイだ、面白かった。安野モヨコ、なかなか良いものを書くのだなあ。「誕生日」という章が素晴らしい。

夜、丸い磯煎餅を食べながら、ジャネット・フレイム『潟湖(ラグーン)』(山崎暁子訳、白水社)を読む。十代の頃に観た映画『エンジェル・アット・マイ・テーブル』で知ったこの作家のデビュー作が読めるのを、とても楽しみにしていた。

水は黒々と神秘的で、大気はつぶやきやざわめきをはらんでいた。それはまるで別世界に入っていくかのようだった。秘められていた世界を、今みつけたのだ。闇が水の上でかたまりになり、東のほうまで横たわっていた。それはさわれそうなぐらい濃く、まもなくふくれあがって地上を覆うだろう。(p.64)

日がな一日芝生にすわって、そのにおいをおぼえてるでしょう、咲いたばかりの白いヒナギクのにおい、花の群れに顔をうずめて、キンポウゲをあごの下にあててバターが好きかどうか占う。どうせバターは好きだから意味はないんだけど、うっすら黄色くなると真の証、ああ早朝はすてきだ、色を塗りたてのぬれたキンポウゲに囲まれてすわっているのは。(p.134)

七千フィート、と女の人は頭の中で言った。映画の長さをおぼえておくのが好きだった。信頼できる事実だから。(p.144)

Sunday, December 21

本日観たもの、銀座のメゾンエルメスで「リギョン 逆転移」、丸の内のクリスマスイルミネーション。

本日観るのをあきらめたもの、パナソニック汐留ミュージアムの「ジョルジョ・デ・キリコ 変遷と回帰」、東京国立博物館表慶館の「エルメス レザー・フォーエバー」、ミッドタウンのクリスマスイルミネーション。いずれも人の多さのため。