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Monday, July 7

矢野久美子『ハンナ・アーレント』(中公新書)を読む。映画(未見)がヒットしたらしいハンナ・アーレントの像を、短時間で辿るに便利な入門書だった。しかしながら、個人的な印象としては、アーレントの思想はおもしろい部分もあるけれど、正直微妙だなあと思うところが多い。アーレントは「事実を語ること」の大切さを強調した、と冒頭で著者は述べるけれど、アイヒマン論争にしても近年の研究蓄積を踏まえれば、アーレントの解釈はどうしたって綻びが出てしまう。いわゆる実証研究にはあまり向いていない思想家だったように思う。実証はさておくとしても、思想内容も独特な人だった。特異すぎて、ついていけない場合、とことんついていけない。長谷部恭男がかつてアーレントの政治観を、「常軌を逸した政治観」と述べていたと思うが、そう言いたくなるのもわからないではない。現代思想界隈の話題を追っていないのでわからないのだが、公共性の議論をめぐってハーバーマスと抱き合わせでアーレントの読み直しだとか、フェミニズム系でアーレント再評価だとか、あのへんの話はその後どうなったのかなあ。もっとも、「悪の陳腐さ」とか「労働・仕事・活動」とか、この人の概念の呈示それ自体は魅力的である。コピーライターとしての素養はあったのではないか、ってアーレントはまったく喜ばないだろうが。

Tuesday, July 8

月末に届くはずの『装苑』(文化出版局)が来てないなと思ったら、定期購読の更新を忘れていた。

Saturday, June 12

竹橋駅近くのブイテーブルでランチメニューとヒューガルデン、ののち、東京国立近代美術館へ。「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」。展覧会名を凝った風にすると、最後の「展」が台無しにしちゃってる感あふれる。

ヤゲオ財団のコレクションはたいへん贅沢で見応えのあるものだった。やっぱりお金があるっていいですね。梅雨の中休みで、外はとても暑い。つぎの目的地は東京ステーションギャラリーで開催中の「ジャン・フォートリエ展」だが、ヤゲオ財団の会長であればきっとリムジンで移動だろう。こちらは東西線で大手町まで行って、そこから徒歩で東京駅だ。喉が渇いたので、ひと休みしようとTORAYA TOKYOに向かったら満席で順番待ちの状態だった。仕方がないので、東京ステーションギャラリーの休憩フロアにある自販機でジュースを買った。ヤゲオ財団の会長であればそのまま東京ステーションホテルに宿泊するかもしれない。お金があるっていいですね。

Sunday, June 13

図書館で借りた松浦寿輝『明治の表象空間』(新潮社)を一日かけて読む。「川の光日記」の影響で、ここの記述はタミーのことだな! と余計なことに気をとられる読書だ。全部は読み切れず、残りは来週へ。