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Monday, May 26

朝7時、ピーター・バラカンのラジオ番組にチャンネルを合わせると、Pharrell Williams「Happy」の景気よいリズムがスピーカーから流れだした。他のラジオ番組ではさんざん聴かされてきた楽曲で、もはや聴き飽きた感すらあるこの音楽が、ピーター・バラカンの番組で聴くことになるとはやや意想外。おなじ番組で以前、最近のアメリカのラジオ放送がヒットチャートの上位にくい込む楽曲ばかりを何度もかけるという統計を紹介していて、その場ではっきり言及していたかは記憶が定かではないが、間違いなくピーター・バラカンはそうした状況をけっして「よいこと」とは思っていないはず。リクエストがあったとはいえ、なんで「Happy」を選んだのだろう。この曲自体は嫌いじゃないけれども。

定期購読している『装苑』(文化出版局)が届く。7月号。

Tuesday, May 27

外務省の「海外安全ホームページ」を眺めていると時間がつぶれる。雷雨発生のときに「東京アメッシュ」をずっと見つづけてしまうような麻薬性がある。治安の悪そうな国を捜して、「退避を勧告します。渡航は延期してください。」というお達しの出ている、地図が赤色で塗りつぶされた場所をしげしげと見つめる。

野矢茂樹『哲学・航海日誌 I』(中公文庫)を読んだ。学芸大学駅ちかくにある古本屋SUNNY BOY BOOKSで、100均の段ボール箱にあったもの。

Thursday, May 29

『図書』(岩波書店)6月号が届く。日本の中世史なんていうものにさして興味はないのだけれど、中世史を専門とする学者ふたり(桜井英治と清水克行)による対談「中世史の魅力と可能性」をとてもおもしろく読んだ。室町時代に二毛作が普及したという話は、高校の日本史の授業で習う。しかしながら、普及したというけれど、実際にはそれを裏づける資料が全然ないらしい。残っている当時の帳簿を検証してみたところで、中世後期の荘園領主の側に残っている帳簿は虚構性が高く、いまいち信用できないという。だから、作付けの実態を知るには花粉分析が必要になるだろうと、対談で語られているのだが、研究者は文献学的な研究はもとより花粉分析なんかもやらなくちゃいけないのかと吃驚する。ちょっと楽しそうではある。

Friday, May 30

Financial Times紙が報じたThomas Piketty, Capital in the Twenty-First Centuryにおけるデータの扱い方がどうも怪しいという件について、The Economist誌がまとめ記事を載せていた。このピケティの本、邦訳の版権はみすず書房にあるようで、刊行は2017年3月を予定しているとのこと。ずいぶんと先の話だ。2017年には現在さかんになされているピケティの所説をめぐる論争なんて、忘れてしまっていると思うが。

『一冊の本』6月号(朝日新聞出版)が届く。

Sunday, June 1

神保町シアターで相米慎二監督『東京上空いらっしゃいませ』(1990)をみる。上映後に東京堂書店に赴くも、こちらが買おうと思っている本が軒並み店頭にないので、三省堂書店のほうに出向いてどさっと本を買った。

六本木のIMAで発売前の見本をみかけたときから気になっていた、米田知子の写真集『After the Thaw 雪解けのあとに』(赤々舎)をひらく。きのう三省堂書店で買った。2004年に写真家がハンガリーとエストニアを訪れ撮影した作品から構成されたもので、もともとは楠本亜紀と菊田樹子が企画・編集した写真集シリーズ『In-between』を元にしている(未発表作品38点を追加)。『In-between』はいい企画だったなあとしみじみ。エストニアの写真をしばし眺めていたら、梨木香歩『エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦』(新潮社)を読み返したくなってきた。写真が本を呼んでいる。