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Tuesday, March 11

昨年の春から日の出時刻をことさら気にするようになった。東京はきょうから日の出時刻が午前5時台に突入。早いうちから明るくなるのは、とにかく嬉しい。もう冬の暗い朝、人工の光のもとで本を読んだりパソコンのモニターを眺めたりすることができなくなってきた。目が痛くて。少なくともこの冬はほとんどできなかった。目が少しいい具合になって、またできるようになる日が来るとよいのだけれど。

きょうはとても寒く、あしたから暖かくなるとの予報だけれど、3年前のきょうもとても寒く、地下鉄もJRも止まって歩いて帰宅する途中、頬や唇がかじかんで歯の根が合わなくなるほどだった、あの刺すような風の冷たさを、よく思い出す。

Friday, March 14

わせちく(早稲田松竹)で相米慎二監督『翔んだカップル』(1980年)を観る。はあ、もう、なんという素晴らしさだろう、困っちゃう。帰宅して、早速『甦る相米慎二』(インスクリプト)を本棚から抜き出す。

ところで、わせちくのロビーに貼ってあった『翔んだカップル』のパンフレット(?)にあった、相米監督の言葉がよかった。

古い、薄れた記憶のようなフィルムを、時には甘く、苦い思い出は雨でも降らせ、冗談のように語れたら、映画は楽しいものです。「長いような、短いような」奇妙な時間が過ぎて、起った事が、事実よりも生々しく思い返されたりする時、映画について語るのは、楽しいだけではないようです。

なんて素敵な言葉の選び方だろう、と思って、すぐさまiPhoneにメモした。

Saturday, March 15

夕べ午前2時頃までぼーっと夜更かししてしまったので、5時前に目覚めて30分ほどラジオを聴いているうちに二度寝してしまい、結局うつらうつらしながら7時半までベッドの中にいた。朝ごはんはホットケーキと珈琲、デザートにユーハイムのチョコレート菓子。とても美味しい。ユーハイムやモロゾフは子どもの頃から馴染みのメーカーで、何となく、でも当たり前のように好きだ。人気のメーカーや流行りのメーカーよりもずっと。

午前中は掃除・洗濯・食料の買い出し、で終わってしまう。きょうの空は明るく美しい青色だ。それでもまだ風は冷たい。今年の冬は狂ったように白菜ばかり食べている。じぶんがもともと白菜が大好きだということをしばらくわすれていた。実家にいた頃はよく食べていたのに、なぜか一人暮らしをしてからはほぼまったく食べていなかった。お昼は、このあいだ松濤のイタリアンレストランで食べて美味しかった、白菜とトマトとアンチョビのパスタをつくってみて、とても美味しくできて満足して、赤ワインとともに食べた。

夕方、洗濯物を取り込んでから図書館へ。その後、クリーニング屋で仕上がってきたものを引き取り、また新たに数枚預ける。買い忘れていた食材がいくつかあることに気づいて再びスーパーに向かう。食材や日用品の買い出しは好きな行為だけれど、これはちょっと時間のロスだ。うぅ。

帰宅してから軽く常備菜をこしらえる。合間に、数時間前にみすず書房から届いたパブリッシャーズ・レビューに目を通す。夜は、ごはん、しめじと玉ねぎとわかめの味噌汁、豚バラと白菜の梅蒸し煮、キムチ、ビール。白菜ばっかりだな。でも美味しいよ、ほんと。考えてみたらキムチの材料にも白菜がはいってるし、和洋中韓、まったくデキるヤツだ。

きょうの業をなし終えて台所まわりをすっかり綺麗にするのは、疲れるけれど、さっぱり気持ちよくなる快感を失いたくないため、さぼれない。片付けを終えて、洗濯物をたたむ。『リトアニアへの旅の追憶』の中でメカスが「ママの仕事(=家事)には終わりがない」と言っているように、家事はひとりでいたって誰かといたって、生きてる限りはエンドレスだ。でもそれなら丁寧にやりたい。昔みたいな、昼も夜もなく、平日も休日もなく、外食ばかりで家になんかほとんどいられない、生活することを考えることさえできなかった生活よりこのほうがいい、そう思うことは、偶々なのか、それともわたしは元々この生活を望んでいたのだろうか。わからない。わからないことは、いつまで経ってもわからないままだ。

Sunday, March 16

たまには下北沢の古本屋でもめぐろうということになり、いざ下北沢へ。前はよく行っていたけれど、最近はめっきりご無沙汰だ。シモキタといえば再開発で街の様子が変わるだの変わらないだのとずいぶん話題になったが、そこまでこの街と深い関わりがないので、実際どうであるのか正直よくわからない。

ほん吉、古書ビビビ、クラリスブックス、July Booksにて、『COLORS ファッションと色彩』、栃折久美子『装丁ノート 製本工房から』、三浦篤『まなざしのレッスン 1 西洋伝統絵画』、港千尋『記憶 「想像」と「想起」の力』、大西巨人『三位一体の神話』、いしいひさいち『鏡の国の戦争』、ジャン=ルイ・ド・ランビュール編『作家の仕事部屋』、アンドレイ・タルコフスキイ『タルコフスキイの映画術』(扇千恵訳)、蓮實重彦『映画に目が眩んで』、伊井直行『ジャンナ』、鶴岡真弓『ジョイスとケルト世界 アイルランド芸術の系譜』、ジェリー・オッペンハイマー『Front Row アナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録』(川田志津訳)を買う。『まなざしのレッスン』は2001年に出た本だけれど、『UP』の「東大教師が新入生にすすめる本」でいまでもよく挙げられていて、未読なので探していたもの。あと伊井直行の本は絶版のものが多いので、見つけたら買うようにしている。けっこうそろってきて、ほくほく。

帰宅して、何かつくる気力が残ってなかったので、近所のカフェに行って夕飯を食べた。