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Monday, March 17

いしいひさいち『鏡の国の戦争』(潮出版社)からの流れで大西巨人『神聖喜劇』(光文社文庫)を読んでいる。気分はもう戦争。夜、アンチョビとトマトと白菜のパスタ、サラダ。飲みものはペリエ。咽喉が痛くて、体調が思わしくない。

Tuesday, March 18

咽喉が痛いが熱はない。くしゃみ鼻水はほどほどで、身体がだるい。花粉症が迷走したような症状だ。

ビッグデータ以降について論じた本を何か読みたくて、Alex Pentland『Social Physics: How Good Ideas Spread—The Lessons from a New Science』(Penguin Press)を手にとる。個人のプライバシーやセキュリティの問題にある程度は言及しつつも、本書全体をとおして、テクノロジーの進展それ自体にはなんとも楽観的な雰囲気を漂わせながらデータ主導型の社会(Data-Driven Society)を構想しているところが、いかにもアメリカだなあと感じ入る。コンピュータやインターネットの技術的進展を駆動させるのはこうした人たちなのだろうけれど、テクノロジーの話よりも社会学的な分析の議論に慣れ親しんでいると、どうしてもその楽観性に対して一歩引いた目で眺めてしまう。補遺で呈示される数学の話は、むずかしくて理解が届かず。裏表紙をみたらピーター・ガブリエル [1]が推薦文を書いている。

夜、ケンタッキーフライドチキン、ペリエ。

Wednesday, March 19

『ku:nel』(マガジンハウス)を読む。裏表紙を確認すると「編集人」が変わっていて、おそらく編集長とイコールになると思われるが、「ペリカン戸田」 [2]の名前が表記されている。ところで、ページをめくるとマガジンハウスの新入社員募集の広告がさし挟まってあるのをみつける。

*学業分野において卓越した結果を残し、積極的な課外活動等の経験があること。
*常識的な日本語で業務遂行能力があること。

前者と後者でずいぶんな温度差があるのだった。前者を元に採用したら後者の能力がゼロでひどく苦労した過去の経験が滲み出ているかのような募集要項である。

Thursday, March 20

思うところあって英訳版の『HHhH』を再読中。

夜、ヤマモリのレッドカレー、サニーレタスときゅうりと玉ねぎのサラダ、ペリエ。「ヤマモリタイカレーの歌」 [3]なるものの存在を知る。

眠るまでの時間にヴィルヘルム・ハンマースホイの図録を眺める。冒頭に長い解説文がついているが、デンマーク語なので清々しいほど何が書いてあるかわからない。

Friday, March 21

『The Economist』を読み、アキ・カウリスマキ監督『マッチ工場の少女』(1990)をみる。夜、白米、じゃがいもとわかめと長ねぎの味噌汁、豚バラと白菜の梅蒸し煮、ペリエ。

Saturday, March 22

上野の森美術館で「VOCA展」をみる。VOCA賞受賞作の田中望《ものおくり》は力作だった。個人的な好みでいえば大原美術館賞の佐藤香菜《マブイグミ》がよかった。ひさしぶりに選考委員のなかに笠原美智子の名前をみつける。カレー沢薫「ニァイズ」の影響で、彼女の選評を読んでいるとけだるい松岡修造に脳内変換されてしまう [4]

山手線で上野から有楽町に移動し、シャネルネクサスホールで「Signature of Elegance リリアン バスマンの仕事」、ポーラミュージアムアネックスで「ポーラミュージアムアネックス展2014 光輝と陰影」、LIXILギャラリーで「ブルーノ・タウトの工芸 ニッポンに遺したデザイン」と「伊藤幸久展 あなたならできるわ」と「金貴妍展 陶 wish」、東京国立近代美術館フィルムセンターで「小津安二郎の図像学」をみる。

夜、東京国立近代美術館で買った『河野鷹思のグラフィックデザイン』をひっぱりだして、小津映画のポスターを再確認。

Sunday, March 23

渋谷にて。移動中の読書として、装丁が素敵な酒井忠康による美術評論集『スティーヴン・ディーダラスの帽子』(形文社)を持参。東急百貨店の丸善&ジュンク堂で金井美恵子のエッセイ・コレクション『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を買う。その後、映画美学校でソ連映画を二本。ミハイル・ロンム監督『一年の九日』(1960)とゲオルギー・ダネリヤ監督『モスクワを歩く』(1963)をみる。『モスクワを歩く』はヌーヴェルヴァーグの映画をみているような瑞々しさだった。のちに『不思議惑星キン・ザ・ザ』を撮る監督と一緒だとは思えず。

  1. ピーター・バラカンに従えば「ゲイブリエル」と表記すべきだが。 []
  2. ペリカン戸田の遠い夜明け []
  3. ヤマモリタイカレーの歌 []
  4. ニァイズ31号 []