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Monday, February 24

ミヒャエル・ボレマンスの画集が届く。『Michaël Borremans : Eating the Beard』(Hatje Cantz)。独特な奇妙さで満ちた油彩をじっくり眺めながら、この画家がベルギーのゲントを拠点にしている事実とともに、ベルギーを訪れたときの記憶を手繰り寄せる。アンソールやデルヴォーやマグリットを生んだ土地だ。どこか変わっているというのはベルギーの十八番かもしれなくて、オステンドの公園の池では彫像が水面から顔だけ出していた。ぷかぷか浮いたように顔だけがこちらを見つめている。怖いアート。なんだったんだろう、あれは。画集に載っている解説の小論に目をとおすと、ドゥルーズの『シネマ1』が参照されていたので、なんとなくその流れで千葉雅也『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)の冒頭を少し。

夜、レッドカレー、サラダ(グリーンリーフ、トマト、玉ねぎ、コーン)、ビール。

Peter Ostwald『Glenn Gould: The Ecstasy and Tragedy of Genius』(W.W.Norton)を読了。駒場東大前駅ちかくの河野書店で買ったこの本は、グールドと親交のあった精神医学者による評伝で、宮澤淳一による日本語訳は2000年というとっくの昔に刊行済み。著者の経歴から精神医学の用語が乱舞する癖のある本だったらどうしようと心配しつつページをめくったのだが、医者としての知見も随所にちりばめられつつ、とても読みやすく明晰な内容。

Tuesday, February 25

都内の図書館で『アンネの日記』が破られる事件について、関連する書籍も被害にあっているようだがそれらの本が何なのかが気になる。その一覧によって犯行に及んだ人間の関心領域が露わになるように思うがどうだろうか。

夜、パプリカとズッキーニとソーセージを焼き、サラダ(グリーンリーフ、トマト、玉ねぎ、コーン)、バゲット、赤ワイン。

図書館で借りた『動きすぎてはいけない』の返却日が明日に迫っていることに気づき、今月最大の集中力を発揮して一気に読了した。非−全体性へ、群島へ。浅田彰や東浩紀の仕事を踏まえたドゥルーズ論は、『構造と力』や『存在論的、郵便的』よりもずっと読みやすく感じる。もっともいま挙げた二冊を読んだのが15年ちかく前の話なので、あくまで「読みやすい」とは漠然とした印象で、『動きすぎてはいけない』で引用される東浩紀の所説を読みながら『存在論的、郵便的』にこんなこと書いてあったっけ? とすっかり忘れている。予想外に早く読み終えることが出来たので、寝るまでの時間にドルチェ&ガッバーナの14/15年秋冬ミラノコレクションを見る。ドゥルーズ&ガタリからドルチェ&ガッバーナへ。

Wednesday, February 26

筑摩書房のトーベ・ヤンソンのコレクションから、『軽い手荷物の旅』(冨原眞弓訳)を読む。今年はトーベ・ヤンソン生誕100年ということで、書店にはムーミンを含めヤンソンの本がたくさん並んでいる。復刊もあるようで。ヤンソンを積極的に翻訳してきた冨原さんも稼ぎどきだ。もっともシモーヌ・ヴェイユの翻訳をしている人がもしも「稼ぎどき」とか考えていたら、ちょっとがっかりだが。ヴェイユのあの丸めがねに¥マークを描きたくなる。

夜、白米、長ねぎとわかめの味噌汁、白菜と豚肉の炒めもの、小松菜のおひたし、白菜の漬物、ビール。

Thursday, February 27

『一冊の本』(朝日新聞出版)3月号が届く。金井美恵子の連載で、アイヒマン裁判の傍聴記をハンナ・アーレントとは別に開高健も書いていたことを知る。

夜、白米、塩わかめスープ、豚バラ大根、キムチ、冷奴、烏賊の塩辛、ビール。昨夜、一篇だけ読み残しとなっていたヤンソンの短篇集『軽い手荷物の旅』を読み終える。

Friday, February 28

iPad miniで『The Economist』誌。この「週刊新聞」は記事の数が多いので、じぶんの気になる記事に目を通すのが普通の読み方かと思われるが、貧乏性なので頑張ってぜんぶ読む。なんのことやらよくわからない内容でも、とにかく読む。修行である。

夜、ベーコンと茄子と玉ねぎとほうれん草のパスタ、赤ワイン。

Saturday, March 1

2ヶ月周期で世界各国の朝ごはんを提供する、青山にあるWORLD BREAKFAST ALLDAYでベルギーのメニューを食べる。これまでこの店ではベトナム、フィンランド、ベルギーの朝ごはんを食べてきたが、食にかんしてはわりと保守的なので、常時用意されているメニューの「イングリッシュ ブレックファスト」がいちばん口にあうのではないかと密かに睨んでいる。

初台に向かい、東京オペラシティアートギャラリーでさわひらきの個展「Under the Box, Beyond the Bounds」を見る。個々の映像作品のみならず会場構成も素晴らしく、ここ最近見たもののなかでは屈指の展覧会。じっくりと堪能したい映像が並んでいるので、座る場所が少ないのがもったいないと思った。上の階の寺田コレクションのフロアにある、座り心地のよい椅子をぜんぶ下にもってくればいいのに。

新宿の紀伊國屋書店で、ジュリアン・グラック『シルトの岸辺』(岩波文庫)、松浦寿輝『青天有月』(講談社文芸文庫)、George Packer『The Unwinding』を買う。本屋を覗いた目的は、金井美恵子エッセイコレクション『映画、柔らかい肌。映画に触る』(平凡社)だったのだが、調べたら発売日が3月末に延びていた。当初は去年の12月に刊行予定だったはずだが、どんどん延びる発売日。ゴドー化するエッセイコレクション。

Sunday, March 2

髪を切る、靴を磨く。

イタリア特集の『MONOCLE』3月号を読んで一日が終わる。世界各国のデザインだったりファッションだったりアートだったりの小ネタが満載でおもしろいのだが、如何せん日本の書店で買うと雑誌としては異様な値段。ところで編集者一覧にはEditor at LargeとしてHidetoshi Nakataの名が載っているのだが、この雑誌で何やってるんだろうかヒデさん。

夜、白菜とウィンナーの蒸し煮、グリーンリーフとトマトと玉ねぎとコーンのサラダ、ビール。