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Monday, February 10

新宿のK’s cinemaでハル・ハートリー監督『シンプルメン』(1992)を観る。ノロやら雪やらに阻まれ、あわや全作品の鑑賞ならずか、と一時期不安になりかけたけれど、これでなんとか3本目までこぎつけた。残るはあと1本、ついにラスト1本か、寂しい。ハル・ハートリーの映画を観ることはただただ、楽しい。映画を観る喜びでいっぱいになる。

Tuesday, February 11

ユーロスペースで開かれている「トーキョーノーザンライツフェスティバル」(北欧映画祭)へ。楽しみにしていたトーベ・ヤンソンのドキュメンタリー2本を観に行ったのだが、なんと立ち見となってしまった。いつも映画館にはなるべく早く着くようにしていて、混雑を予見して整理券をもらったら番号が1番だった、とか一桁台だった、という事態がたびたび起こるのに、なぜきょうに限って……。それでも、ヤンソンがパートナーのトゥーリッキ・ピエティラと毎年過ごした夏の家を撮った『ハル、孤独の島』(カネルヴァ・セーデルストロム/リーッカ・タンネル監督、1998)と、ヤンソンとトゥーリッキの日本・アメリカ・メキシコ旅行を追った『トーベ・ヤンソンの世界旅行』(カネルヴァ・セーデルストロム監督、1993)はいずれも面白く、特に『ハル、孤独の島』にはスクリーンの中の夏の島の世界にくいくいと引き込まれて、立って観ているのも苦痛ではなかった。

今回上映された2作品の監督は、このたび映画祭に合わせて来日しトークショーが予定されており、わたしも行きたかったのだけれど諸々予定が合わず断念したのだった。けれど一人の方は体調を崩し来られなかったそうだ。本日、監督のトークショーはないのですが、現在トーベ・ヤンソンの評伝も翻訳中だという通訳の森下さんという女性が上映後に少しお話してくださいます、という案内があり、終わってから話を聞いた。森下さんはこれまでずっと、これらヤンソンのドキュメンタリー作品の上映をほうぼうにかけあってきたがいつもスルーされてしまって叶わなかったそうで、実に18年間温め続けたこの企画、このたびようやく上映にこぎつけることができた、先日来日した監督も日本の観客の心ある反応にとても喜んでいた、この映画は夏の島を処分しよう、もうこの島から離れよう、と決めた時に企画されたもので(ちょっと記憶があやふやだけれどたぶんこう話していたと思う)勇気をもってじぶんのやりたいように生きなさい、信念をもってじぶんの心に忠実でありなさい、というヤンソンの遺言のようなものだ、ということを涙声で語っておられて、その想いが伝わってきてこちらもぐっときてしまった。生の声というのは貴重だ。それにしてもヤンソン人気すごいなあ。会場にはムーミンのバッグなんかを持った人もチラホラ。

ちなみに『ハル、孤独の島』ではヤンソンの著書『島暮らしの記録』の一部が朗読されているとのこと。気づかなかった……ので、帰ってから本を繙いてみようではないか。

松涛Marでアンチョビと白菜とフレッシュトマトのパスタ、グリーンサラダ、スープ、田舎風テリーヌ、赤ワインの昼食を済ませてから、松濤美術館で「ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展」を観た。

街はとても寒い。わたしは雪がなくたってよく滑って転びかけるので、まだ少し路面に雪が残っているきょうは用心してレインブーツを履いてきた。ロングブーツだからミニ丈のワンピースでもなんとか凌げるだろう、と思ってミニのワンピースを着てきたが、やはり膝のあたりがすーすーして寒い、寒い。まあ、そりゃ寒かろう。雪は、降った後がいちばん寒いのだ。

Wednesday, February 12

ピエール=アンリ・サルファティ監督『ノーコメント by ゲンズブール』(2011)を観る。

Friday, February 14

朝5時からのラジオ番組の選曲が素晴らしく、うっとり聴いているうちに6時になり、雪が降り出した。二週連続の週末雪だ。雪は嫌いだけれどこれだけよく降られると、もう嫌いだ嫌いだとも言ってられなくなる。参りました、と言って白旗をあげる。AIGLEのブーツが心強い味方だ。雪は一日中勢いよく降り続け、夕方、都心の積雪は2cmとニュースが伝えるが、そんなもんじゃないだろうと思う。夕方前からが降りのピークとのことだけれど、朝からすでにじゅうぶんな勢いで降っていて、不安になる。先週のふんわりした雪とちがって水分を含んだ重い雪だという。たしかに、雪を見るとそれがわかる。

夜の献立は、ごはん、明太子、大根とわかめの味噌汁、カマス、烏賊の塩辛、エシャレット+味噌、ビール、で、さしずめツマミ定食といったところか。酒の肴定食とか。食後にチョコレートを食べる。

先週、今週とひどく疲れた。山口晃の『すゞしろ日記』を読むと気持ちが和むので、今週は早々にベッドにもぐり込んでこればかり読んでいた。眠る前にもう一度窓を開けて外を見る。まだまだ雪は降り続いている。あしたは朝一番で美容院の予定なのだけれど、行けるだろうか。

Saturday, February 15

ニュースやTwitterで情報収集をすると、夕べは午前2時頃の積雪27cmをピークに、徐々に雨に変わったらしい。窓の外は強い雨と風。午前7時の東京の積雪は、雨で少し解けて22cmになったというが、片道1時間かけて通っている美容院に22cmも雪が積もった状態で行けるのかどうか。悶々としながら、とりあえずポテトとベーコンのパンと珈琲で朝食をとる。まあでも午後からは雨もやむというし、迷った末行くことに決め、玄関を出る直前に美容院から心配して電話がかかってきたりもしたけれどとりあえず行きますと答えて出発。家を出て舗道に一歩踏み出して驚く。雪が解けたところに雨水がたまって、水の中をじゃぶじゃぶと進んでいかなければならない。これは積雪何cmというより水深何cmの世界だ。ともかくこんな道を歩くのは生まれて初めての経験であることは確か。道行く人たちも苦労して歩を進めている。そういえば先月、美容院に行った日、わたしは日記に「わたしの記憶が正しければ、わたしが美容院に出かける朝、雨が降っていたためしがない」と書いたが、今月はこの有り様だ。驕れる者は何とやらである。

1時間半かけて美容院に到着、カットしてもらっているうちに雨もやみ、晴れ間が見えてきた。帰りは行きよりもスムーズで、無事家にたどり着き、ゴミ出ししたり、また頑張って歩いて近くの図書館に本を返しに行ったり。お昼は担々麺。夜は、ごはん、牛肉と白菜のキムチ炒め、大根と長ねぎとわかめの味噌汁、ビール。大したことはしていないのにきょうもきょうとて疲れた一日だった。

Sunday, February 16

雪が降るとなんとなく目が冴えてしまい、落ち着かない。子どものように。それにしても今回の雪はさすがにひどく、東京に住むわたしは舗道を歩くのに少し苦労するくらいでどうってことはないが、夕べ、夜中に甲府や秩父の豪雪に関するいろいろなニュースや情報を見てやりきれなくなった。これはもう災害ではないか。

そういえば昨年1月に雪が降ったときは、家の窓から見える大木の枝が雪の重みで折れたのだった。あれは本当にびっくりした。今回は折れなかったけれど、午前中、マンションの屋上に洗濯物を干しに行ったついでに下界を見下ろすと、ところどころで小さく細い枝が折れているのが見えた。屋上では親子が雪遊びをしていた。

きょうは朝からよく晴れていて、光を反射する白い雪がわたしの目には眩しすぎて少し涙が出る。食材の買い出しに行き、黙々と常備菜をこしらえ、家事に明け暮れる一日。