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Thursday, December 12

きのうの夜、花屋からクリスマスリースが出来ました、の知らせが届いたので早速受け取りに行く。生木のリースというものにずっとずっと憧れていて、今年こそいよいよ飾ってみようと発奮し、少し値段は張るけれど注文した。出来上がったものを見て心の底から感激、やはり生木にしてよかった。大きな袋に入れてもらって帰る。ずっしり重い気もするけれど、大きさも重さも全然気にならない。部屋の壁に飾り、生木の香りを吸い込む。本当に嬉しい。

昼間は、吉田喜重『小津安二郎の反映画』(岩波現代文庫)を読み、夜、DVDでル・コルビュジエのドキュメンタリー『ル・コルビュジエ PART 1』(ジャック・バルザック監督、1987年、フランス)を観る。鑑賞のおともにポテロング、ポテチ、赤ワイン。またワインが飲めて嬉しい。しみじみ美味しい。

Saturday, December 14

開催されていることを数日前に知ったばかりの『市橋織江展』を観に、箱根彫刻の森美術館まで出かけることに。パンとおにぎりを買って小田急ロマンスカーに乗り込む。

渋谷マークシティの季刊誌の表紙の写真が本当に素敵だったので毎号集めて、表紙だけ切り取ってファイリング、なんてことをしていた。その写真を撮っていたのが市橋織江。2006年のこと。今回の展示は新作を含めオリジナルプリント約100点、真白い壁に架けられた写真を淡々と観ていくいい展示。市橋織江の視線はここへきてますます鋭くなったように思える。

美術館内の中華料理店でお昼を食べ、食後は庭をぐるりとまわって緑陰ギャラリーでヘンリー・ムーア、ロダン、メダルド・ロッソ、そして1点だけだけどジャコメッティの彫刻を観て、ピカソ館でピカソの版画や陶芸作品を観る。《花嫁姿のジャクリーヌ》という版画はタイトルの通り花嫁姿のジャクリーヌを描いたもので、制作中の版画に18回修正を加え、その都度試し刷りをした、連作ともいえるようないえないような作品。つまり少しずつ差異の生じた18点の版画がずらりと並んでいるわけで、これにはとても心惹かれた。

園内に円柱型のタワーも見つけたので螺旋階段をぐるぐる上って天辺の展望台まで行ってみる。が、展望台からの眺めよりもタワー内部を埋め尽くすガブリエル・ロアールの「幸せをよぶシンフォニー彫刻」の美しさが印象に残った。ステンドグラス、この場合正確にはスカルプチャード・グラスというそうだけれど、それが外部からの光を受けて穏やかに輝く様子をしばらく眺めていた。

帰京。帰りは、前に箱根に来た時に食べた「菜の花」のまんじゅうがとても美味しかったので、それを買うために箱根湯本で途中下車。買うついでに併設されているカフェで葛切りをいただく。箱根に来て美術館ひとつ観てお茶するだけなんて本意ではないし、久しぶりにロープウェイや海賊船などにも乗りたいところだけれど、まあ、また次回ということでおとなしく帰る。

帰りの電車では会場で買った『”QUOTATION” 市橋織江の現在』(MATOI PUBLISHING)を読む。2011年12月に銀座三越で開かれた写真展「PARIS」ではトークショーを聴きに行き、市橋織江のあまりの口数の少なさに喫驚したものだけれど、この本ではじぶんの胸の内をよく語っていて、読み応えがあって面白い。市橋織江の写真をぱっと見てまず思うことはやはり光と色のみずみずしく艶やかな美しさで、それはまさしく「印象派」ではないか。巻頭インタビューにも「作品を通底するテーマはIMPRESSIONNISME」という言葉があるし、そういえばポーラミュージアム アネックスで2012年に開いた個展のタイトルも「IMPRESSIONNISME」。ちなみに印象派画家として真っ先に名前があがるルノワールやモネ、ドガなどよりも、カイユボットの絵などに通じるものがあるのではないだろうか、と考える。市橋織江の写真を観る時とカイユボットの絵を観る時、脳内の同一の場所が刺激を受けている。カイユボットは郊外も描いたが、都市もたくさん描いた。市橋織江も都市をたくさん撮っている。

帰りの電車の窓から外を眺めると白い月が見えた。新松田のあたりでは土手に三脚を立ててロマンスカーをカメラに収めようとしている人がちらほら。いいなあ、私も写真撮るためだけに出かけたい。

Sunday, December 15

穏やかな晴天の週末で気持ち良い。今週後半は雨模様らしいけれど。それにしてもきのう、箱根は寒かった。東京の陽気とは明らかに違った。今朝のごはんは、鮭のおにぎり、じゃがいもとほうれん草の味噌汁、梅干し。久しぶりの和朝食。昼食をはさんでじゃがいもの塩胡椒炒めとオイスターソース炒め、パプリカの肉詰め、そぼろ肉、かぶとかぶの葉とベーコンのソテー、などつくる。お昼はそぼろ肉としめじと青菜のパスタ。赤ワインを少しだけ飲む。やはりきのうの疲れが残っているのか、なんとなく身体が怠い。それにしてもちょっと遠出しただけで、なぜこうも疲れてしまうのだろうか。昔だったら関東近郊に遠出したとしても、夜、東京に帰ってきてから飲み会やカラオケなんかで当たり前のように大騒ぎしていたのに。あまりの寒さに食材や日用品を買いに行く気が失せ、きょうは何十日ぶりかに家から一歩も外に出なかった。しかしあまり動かないのも身体中の血が淀んでくるような気がしてしてよくない。ベストな状態にもっていくのはとても難しい。夕方、少しうたた寝した。夜は怠さが抜けないまま、かんたんな雑炊をつくって食べた。