83

Monday, December 24

ミッドタウンのクリスマスイルミネーションもファスビンダーも海も果たせないままだけれど、チキンとサラダとグラタンとキッシュとケーキとワインでクリスマス。毎年クリスマスが終わると来年までクリスマスソングを聴けなくなるので寂しくなって涙が少しこみあげてくるほどで、明日の夜もきっとそうなるだろう。

Saturday, December 29

日中は年末年始の食料品、日用品の買い出しに追われる。自宅近くのお気に入りのカフェには、年内はもう行けそうもない。昼さがり、めずらしく昼寝をしてしまった。

Sunday, December 30

朝、録音しておいた「80歳 ミシェル・ルグランの軌跡 第1回」(NHK-FM)を聴く。『ローラ』『シェルブールの雨傘』などをともにつくりあげた、ルグランの盟友・ジャック・ドゥミ監督の名前が出ると、自然と本棚に収まっている『フランス映画祭2007特別上映イベント ジャック・ドゥミ、結晶(クリスタル)の罠』(東京日仏学院)に手がのびる(たしかこれは清澄白河の古本屋、eastend TOKYO BOOKで購入)。そのなかに収録されているルグランのインタビューには

ジャックとの初期の作品群において、私たちはとてもすばらしい方法を採用することができました。「スタジオに入って、僕は君にフィルムを見せる。映像が流れている間中、会話をし、即興でピアノを演奏しないか」と彼は言いました。このやり方は、ジャックの「普通の」映画によく合っていました。通常の音楽映画ではこういったやり方はとられず、もちろん音楽は撮影の前に作られています。『ローラ』では、ジャックは歌の場面を音楽なしで撮影しました。アヌーク・エーメはジャックの台詞のみを言っていたんです。ですから後で、ありえない問題にも直面してしまいました。つまり、本来先行して行なわれるべきことを後からしなければならなかった。ひとつのメロディーラインを見つけるために彼女がどのように発音しているか観察しなければならなかったんです。

とあり、そんな超絶技巧的な手法であの名シーンは誕生したのかと驚愕する。

お昼は「日本を乾かさない男」の素晴らしい異名をもつ、自他ともに雨男と認める殿方とランチ密会。その名に恥じぬ大粒の雨のなか歌舞伎町に繰り出し、美味しいタイ料理を食しながら本のこと、映画のこと、音楽のこと、それぞれの日常について年忘れ放談。食後に珈琲を一杯飲んで解散する頃には土砂降り状態で、さすが! いい仕事しますよ、ほんと。

TSUTAYAであんたら、ほんと、しょうもない、一体いつ観るのよ、という感じの大量のDVDとビデオをレンタルし、大雨のなか帰宅。夕ごはんは、たらこと水菜のパスタ、赤ワイン。食後に私的ゼミ、ベンヤミン9回目。

Monday, December 31

きょうの最優先課題はおせち料理づくり。読みかけの本も書きかけの文章も脇に追いやって、おせち料理を完成させる。最後にキッチンとトイレの大掃除。あとはできることをやる。できないことはしない。

午前中、松浦寿輝がMCを務める「ミュージック・イン・ブック~音楽と文学の交差点~」(NHKラジオ第一)を聴く。ゲストは平野啓一郎。グールドの弾くショパンを初めて聴いた。

日用品の買い出し、雑用、昼食を挟みつつ夕方には無事おせちも出来上がり、一年ぶりに棚から出したお重に詰めた。テーブルの上につくったものを並べてひとつずつ重箱に詰めていく、この瞬間がいちばん好きだ。とはいえわたしのおせちは鮭の昆布巻き、大根とにんじんの紅白なます、黒豆とチョロギ、たつくり、蓮根と椎茸の煮物、卵焼き、紅白かまぼこ、うずらの卵と絹さや、と、簡単で単純なものだ。それでも、チキンも焼かず、ローストビーフもシュトーレンもつくらずすべてお店で調達してくるクリスマスとはちがってどうしてもお正月のおせち料理はじぶんで(かまぼこ以外は)すべてつくりたいと思うので、この思いがつづく限り細々とでもつくるのだろう。

なんとかやることをすべて済ませて夜は牛肉、鶏肉、ほうれん草、水菜、卵をのせた年越しそばとビール。ベンヤミンの『複製技術時代の芸術』を精読するという私的ゼミは、全20回の当初の予定を大幅に短縮し今夜で終了。すべり込みで2012年内に終わった。次はフーコーを学ぶ予定だが、果たして。

昨年、年越しとともに開けようとしていたシャンパンを年を越す前にまんまと飲み切ってしまったというのに今年もまた似たような過ちをくり返す。残りわずかとなったグラスワインを横目にラジオから流れるJ-WaveとInterFMを交互に聴きつつ、InterFMのピーター・バラカンとともに新年のカウントダウン。バラカンさん、もっと淡々とハッピーニューイヤーを告げるかと思っていたけれど、スタジオは予想以上ににぎやかな様子だった。当然そこではシャンパンが開けられており、うらやましいことこの上ない。

今年はだいぶ写真集に散財してしまった。手に入れて嬉しかったのは澁谷征司『BIRTH』(赤々舎)、Terri Weifenbach『Between Maple and Chestnut』(Nazraeli Press)、尾仲浩二『Matatabi』(スーパーラボ) の3冊としよう。