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Monday, April 23

夕べ、遅くまで本を読んでいたので眠い。でも4時50分起床だ。なぜならきょうの朝5時から愛聴しているJ-WAVEとNHK-FMの電波送信が東京タワーから東京スカイツリーに変わるということで特別番組が組まれているからそれを聴くため。ラジオリスナーとして使命感を帯びている。とはいえ、なぜそこまで。昼下がりをピークに、一日中眠かった。

Wednesday, April 25

今年の四月は雨が多い気がする。きょうは久しぶりに爽やかな晴天で、朝干した洗濯物が昼頃にはほとんど乾いていた。

きょうから朝日新聞で松浦寿輝の文芸時評がはじまったのでそれを読みに、そして予約していた本を受け取りに図書館へ。

夜、『去年マリエンバートで』(アラン・レネ/監督、1961年、イタリア/フランス)を鑑賞。脚本は作家のアラン・ロブ=グリエ。Wikipediaのあらすじをコピペすると「主人公の男Xは、女Aと再会する。Xは去年マリエンバートで会ったと語りかけるのだが、Aは記憶していない。しかし、AはXの話を聞く内に、おぼろげな記憶を取り戻していく。Aの夫であるMは、「去年マリエンバートで」実際に何が起こったのか知っている」となるのだが、昼間読んだ松浦寿輝の評論では荻世いをらの『東武東上線のポルトガル風スープ』を「後藤明生の二十一世紀版とでも呼びたくなるような」云々と評しており、この作家も作品も知らなかったので調べると、2012年5月号の『文學界』に掲載されていることがわかり、webで冒頭を立ち読みできるようになっているため目をとおしてみたらばどうやら夫から料理の天才と思われていて実際そのとおりであるAが登場し、そのAの従兄弟で床屋であるSが登場したりするようで、このAとかSとかは松浦寿輝も評論のなかでちゃんと説明してくれているのだけれど詳細をわすれてしまって、まあそれはともかく人物をアルファベット1文字で表すささやかながらも意外な符牒に驚いたのだった。

Friday, April 27

そういえば、8月からはじまる『三大映画祭週間2012』では、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の新作『ザ・ラスト・サーカス』が『気狂いピエロの決闘』というタイトルで公開されるようだ。「気狂い」はNGではなくなったのだろうか。

今月、伊井直行の『さして重要でない一日』が『星の見えない夜』とともに講談社文芸文庫で復刊したので、『さして重要でない一日』は講談社文庫で、『星の見えない夜』は単行本で所有しているのだけれどやはり新装刊ということで購入欲がむくむくともたげており、書店パトロールついでに棚にあったその真新しい文庫を引き抜いた。復刊に際しての著者自身によるあとがきも自著年表も柴田元幸による解説もわくわくしながら読み、伊井直行の面白さは相変わらずなんだけどどこがどう面白いのかを表すのは本当に難しいなあ、と思い、そのことは柴田さんも書いている。伊井直行はあとがきでこの「二つの小説のムードがややネガティブである」と書き、「その証拠に、二つとも“ない”が入っている」と書いている。たしかにそうだ。でもこれを読むまで気づかなかった。そして「今ならば、意義ある一日や、星の美しい夜を書こうとするだろう」とも書いていて、じんわりと可笑しい。ちなみに彼が1997年から2000年にかけて発表した小説『濁った激流にかかる橋』には「恋と市長と水しぶきのかかる橋」という章があるのだけれど、これはロメールの『木と市長と文化会館』を意識しているのだろうか? ロメールって偉大。(そこか)

Saturday, April 28

美容院。いつも行く美容院はマンツーマン制で女性がひとりでやっているため、早めに予約をしなければいけないというのが注意点なのだけれど、本当によく融通をつけてくれるお店なので、きょうは無理をいって開けてもらったようなかたちになってしまった。二人目の赤ちゃんが生まれたばかりの彼女に、「ミミエデン」というスプレーバラの花束と、marimekkoの涎掛けを贈った。祝福と感謝の気持ちを込めて。

さっぱりしてから小田急線に乗って参宮橋で下車し、パンケーキの美味しいお店「ももちどり」へ。このお店は運良くオープン当初から知ることができて、平日の昼間にこちらでパンケーキをのんびりいただくという至福を享受していた時期がほんの少しある。今でも美味しさはまったく変わっていないし、メニューも変わっていない(と思われる)。それはすごいことだと思う。パンケーキのお店はいくつか名の知れたところがあるけれど、わたしにとってはここがオールタイム・ベストワン。しかし近年、だいぶメディアに取りあげられてお客さんが増えてきたので、訪れるときは開店前に並ぶか、予約することをおすすめします。ランチセットの定番、プレーンなパンケーキ(はちみつ&メイプルシロップがつく)、野菜がたくさんのサラダ、青豆とグリーンピースのスープ、珈琲をいただいた。このスープがこれまた絶品で、わたしは密かにパンケーキ以上にこのスープを推している。昔のミシン台をテーブルとして使うインテリアもいい。

お腹を満たしてから古本探訪へと繰り出す。小田急線沿線で「ロスパペロテス」「SO BOOKS」「リズムアンドブックス」、中央線沿いで「音羽館」「ささま書店」をめぐった。中央線に縁がないので音羽館とささま書店は初登頂だ。10冊ほど購入したうち、長年探し求めていた蜂飼耳の『空を引き寄せる石』を見つけられたのが至上の喜びだった。『孔雀の羽の目がみてる』は所有しているのにその対となるこの本を持っていなかったのだ。これで2冊並んだ背表紙をじぶんの本棚で眺められる。もう1冊はチェコ生まれの抽象画家フランチシェク・クプカの画集、クプカも1994年の世田谷美術館での展覧会以来、日本では単独の展示がなかなか催されないため、出会えたときには幸運のしっぽをしっかりつかまえなくてはならない。ほかに、蓮實重彦『随想』、持っていたはずなのになぜかどこを探しても見当たらない武田百合子&野中ユリの『ことばの食卓』、なぜか持っていなかった川端康成『反橋・しぐれ・たまゆら』などを購入。途中、西荻のクワランカカフェでビールとおつまみ(ピクルス、チーズ、生ハム)をいただく。ラストのささまで足の疲れにより力尽き、ドトールでしばしの休憩。

美容院と古本屋めぐりのカップリングは両方とも快楽の極みなのに、けっこう疲れる。

Sunday, April 29

赤煉瓦図書館のある場所はじぶんにとって思いっきりアウェイであるはずなのだが、いくたびかの訪問でじょじょにホーム気分が増してきた。書架に頭部をつっこんでばかりいないで、神奈川県立近代美術館葉山などの建築で知られる佐藤総合計画設計のこの建物をもっともっと愛でたいのだけれど、結局、涼しい風の吹き抜ける中庭でエヴァ・ホフマンの『記憶を和解のために』のページを捲っていた。いい季節だ。でも太陽の光を含んだ紙面の白さがわたしの目には少し眩しすぎる。