109


Monday, June 24

『戦後史の中の英語と私』(鳥飼玖美子/著、みすず書房)を読了。アポロ月面着陸のテレビ中継は、日本において「通訳者」という職業の社会的ポジションにも大きな影響を及ぼしたらしい。本来は裏方としての通訳業。しかし視聴者から「あれは機械が英語を日本語にしているのか?」との問い合わせがきたので、やむなくブラウン管に登場せざるをえなくなったとのこと。著者の自伝的要素と戦後史が絡みあう通訳の舞台裏のはなしをおもしろく読む。

Tuesday, June 25

『波打ち際に生きる』(松浦寿輝/著、羽鳥書店)を読了。松浦寿輝の本はわりかた読んでいると思うが、これまで出してきた自著の紹介で本人が「つまるところ、これがわたしの書いた最高の本だと思う」と書いている『青天有月』(思潮社)を、読んでいないことに気づく。

Saturday, June 29

午前九時すぎ、上野駅着。東京都美術館で「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 天才の肖像」展。きっと混んでいるに違いないと予想して出掛けたら、予想どおり行列ができている。そして予想どおり、展示内容はダ・ヴィンチよりもダ・ヴィンチの周辺が大半を占める。東京都美術館、次回は福田美蘭らしい。ダ・ヴィンチのつぎが福田美蘭って振れ幅が大きい。つづけて東京藝術大学大学美術館で「夏目漱石の美術世界展」を見る。とても充実した展示内容で、おおいに満足し、おおいに疲れる。図録も購入。漱石の美術批評が好き勝手に暴言連発でおもしろい。当時の美術界が漱石の批評をどう思っていたのかが気になる。小説家としては著名だが、いろいろと難癖をつけてくる困ったおっさんだなーくらいに思っていたかもしれない。漱石自身も絵を描いており今回展示されているのだが、なんというか、微妙な出来映えだ。しかし出来上がった自作に漱石はおおいに満足し、周囲に素晴らしい完成度だと吹聴していたという。困ったおっさんである。上野の森 PARK SIDE CAFE で昼食ののち、銀座に移動。「ルシアン・クレルグ/ピカソ、コクトー2人の天才の素顔」(リコーフォトギャラリー)、「ミヤマケイ/白粉花」(ポーラミュージアムアネックス)、「フィリップ・ヴァレリー/いくつもの夜をこえて」(シャネルネクサスホール)、「シガリット・ランダウ/ウルの牡山羊」(メゾンエルメス)とギャラリーめぐり。どっと歩き疲れる。夏はもうすぐ。日中の街歩きは危険な季節がやってくる。J-WAVEの番組「東京REMIX族」が最終回。唐突に終了した。番組改編の時期でもないのになんということだ。このまるでJ-WAVEっぽくない番組がJ-WAVEのなかでいちばん好きだったかもしれないというのに。

Sunday, June 30

きのう銀座の資生堂で手に入れた『花椿』7月号を読む。穂村弘と対談している松田青子が抜群におもしろい。短い対談だが、発言を抜粋していくだけで、語録をつくれる。

・幼稚園の段階で「自分は駄目だな」ってわかりました。集合写真も私だけ完全に浮いているんです。真っ直ぐ立ててない。
・恋愛とか全然面白くないですよね、なんなんですか、あれ。
・変わらない現実や人に対して絶望することに飽きたので、そんなことで揺るがない私を作る方向に行きたいんです。
・切ない。そんなに自分でちゃんと言語化できてしまうのが切ない。
・とりあえずどんな状態でも一人で生きていけるお金がちゃんとあればいいです。
・会社を辞めた時は本当に嬉しかったですね。会社とか学校ってすごく乱暴だなっていう気持ちがずっとあって、もう乱暴さに触れなくてよくなるから嬉しいなって思いました。
・旅行って考えるだけでストレスが溜まります。
・ひとつでも多く読んだり観たりしたいと思いながら毎年終わっていきますね。
・むしろ今が旬です。10代20代の頃は読み方やすごさがわかっていなかった本もあるけれど、実際に自分でも書くようになったら気づくこともいろいろあって。ようやくちゃんと読めるかもしれない、という気持ちがあるんです。だから、今、とてもテンションが高いんです。