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Monday, July 9

定時すぎに会社を出てまっすぐ帰宅し、夜、白米、豆腐と葱の味噌汁、鰺の塩焼き、大根おろし、塩辛、南瓜煮、ヱビスビール。トルコの映画監督セミフ・カプランオールの作品を二本、『卵』(2007年)と『ミルク』(2008年)。「ユスフ三部作」としてあと一本『蜂蜜』があるのだが二作品を観終えたころにはもう日付が変わる時間帯だったためこちらは日をあらためて。

Tuesday, July 10

山田五十鈴の訃報。

ここで私は、六十歳を過ぎて初めて告白することになるのですけれども、よく女優は誰が好きかときかれることがあります。「女優で映画を見ているわけではない」などといって、そういう問いはこれまで一蹴してきたのですが、つい最近になって、私が一番好きな女優は山田五十鈴だったと思いあたりました。その発見に自分自身が驚いているのです。それをあえて公言するのは恥ずかしいのですが、一九三〇年代の山田五十鈴は本当に素晴らしい。演技が素晴らしいとか、横顔が美しいとかいった水準を遥かに超えて、存在そのものが他を寄せつけがたく輝いている。その個人的な趣味を皆様に強要するつもりはありませんが、やはり、世界映画史の大女優ともいうべき女性がここに確かにいるとうのがはっきりわかってまいります。(『映画への不実なる誘い 国籍・演出・歴史』、蓮實重彦/著、NTT出版)

夜、白米、しらす、葱の味噌汁、ししゃもの丸焼き、大根おろし、茄子とピーマンの炒めもの、冷や奴、鰤大根、ヱビスビール、デザートに桃。

自伝風エッセイが言語論であり小説論に化ける『言葉を生きる』(片岡義男/著、岩波書店)を読む。

Wednesday, July 11

『ルーブル美術館訪問』(ストローブ=ユイレ/監督、2004年、フランス)と『ロープ』(アルフレッド・ヒッチコック/監督、1948年、アメリカ)を鑑賞。夜、白米、小松菜と葱の中華風スープ、かますの塩焼き、大根おろし、ひじきの煮物、莢豌豆、人参と大根のなます、キムチ、塩辛、ヱビスビール。

Friday, July 13

雑誌は発売からひと月遅れで図書館から貸出の許可がおりるので人々の話題の潮が引いたころにアントニオ・タブッキを特集した『ユリイカ』六月号を読んでいる。和田忠彦の訳文による短篇アンソロジーと、和田忠彦と堀江敏幸の対談に目をとおしていたら消灯時間。

夜、クロワッサンと海老バーガー、生ハム、サニーレタスと胡瓜と玉葱とミニトマトのサラダ、赤ワイン。

Saturday, July 14

「夏の私は、衝動物である。」とコピーの掲げられた西武百貨店を訪れたのは値下げされた洋服を物色するのが目的でなく、もう駄目になってしまったフライパンの代わりをさがすため。フライパンの入った手提げ袋を携えたまま山手線で日暮里に移動し、谷中霊園を抜けてスカイ・ザ・バスハウスでの展示「平野薫/Re-Dress」にむかう。谷中の夕焼けだんだん傍の古書信天翁で『明日、広場で ヨーロッパ1989-1994』(港千尋/著、新潮社)を購入したのち、鰻を食べたくなったので夕飯として稲毛屋の入口まで行くも本日は予約でいっぱいですとの貼紙に撃沈し、方向転換してCOUZT CAFEへ。たらふく食べるも食べすぎて家に帰ってから寝込む。

Sunday, July 15

渋谷の映画館イメージフォーラムでホセ・ルイス・ゲリン監督の『ベルタのモチーフ』(1983年、スペイン)と『ゲスト』(2010年、スペイン)の二本を鑑賞。外は快晴で灼熱地獄だが、館内は冷房が効きすぎで極寒地獄。ストールをもってきてよかった。夕刻、突然のお客はもちろん突然じゃないお客すら訪れることのない自宅に人をお招きし、ピザとサラダを食べながら日本のビールとベルギービールとともに歓語。