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Monday, April 9

『時計まわりで迂回すること 回送電車V』(堀江敏幸/著、中央公論新社)。あちらこちらのさまざまな媒体で見かける堀江敏幸の短いエッセイはすべて『回送電車』のための「連載」だと解釈している。残業。夜、蛤、パプリカ、ズッキーニ、青梗菜、ベーコンの酒蒸しとパスタを和えて、胡瓜のピクルス、白ワイン。

Tuesday, April 10

テレビのない生活というかテレビを見ない態度について説明しようとすると、既存の大手メディアに対する悪態が全面にでてしまう野暮な雰囲気の語りになってしまうので、さしあたり「ナンシー関が死んじゃったから」と述べるのがいいと思っていたのだが、『時計まわりで迂回すること』を読んでいたら「十八歳から二十四歳までの六年間、私はテレビ受信機を所有していなかった。おかげでこの間のバラエティ番組の知識がすっかり抜け落ちていて、ナンシー関の本を読むたびに悔しさで頭をかきむしりたくなる」という記述に遭遇。残業。夜、塩ラーメン(鶏肉、もやし、万能葱、卵、キムチ)、ビール。

Wednesday, April 11

『三日月とクロワッサン 宇宙物理学者の天文学的人生論』(須藤靖/著、毎日新聞社)を読む。『UP』(東京大学出版会)での連載をまとめたものということはつまり『人生一般二相対論』(東京大学出版会)の続編。書誌情報を確認してすぐに疑問として浮上するなぜ版元が毎日新聞社に変わっているのかについては「無意味に長い後書き」にくわしい。

前著は、タイトルとT大出版会の2つから考えて、書店では物理学の棚に分類されていたようだ。内容的には芸人が書くエッセイの棚に並べるべきであろう。

とあるように内容およびテンションは前著を踏襲。残業。夜、白米、油揚げと葱の味噌汁、冷や奴、秋刀魚の塩焼きと大根おろし、ビール。

Thursday, April 12

川端康成文学賞が江國香織に決まったという報をうけて審査員は誰なのかという話になり、「どうせ堀江敏幸じゃないのか?」と一体なにが「どうせ」なのかよくわからないけれどもあてずっぽうで固有名詞を挙げたら正解だった。もう「堀江敏幸」が一般名詞に聞こえる。残業。夜、白米、辛子明太子、葱の味噌汁、鮭と昆布、ハムの胡麻炒め、ほうれん草のおひたし、キムチ、ビール。

Friday, April 13

残業と併走するのは哲学と文学。『新訳ベルクソン全集1 意識に直接与えられているものについての試論』(アンリ・ベルクソン/著、竹内信夫/訳、白水社)と『文学のミニマル・イメージ モーリス・ブランショ論』(郷原佳以/著、左右社)を鞄に忍ばせて。夜、イエローカレー、胡瓜のピクルス、コロナビールをライムとともに。

Saturday, April 14

休日出勤と併走するのはきのうとおなじ『意識に直接与えられているものについての試論』と『文学のミニマル・イメージ』。

文学は夜ではなく夜の憑依である。夜ではなく、たえず監視しては襲われ、それゆえたえず消失し続ける夜の意識である。文学は夜の意識である。文学は昼ではなく、昼が光となるために追い払った側面である。そして文学は死でもない。というのも文学において現れるのは、存在なき実存、過酷な肯定として始まりも終わりもなく実存のままにとどまる実存、死ぬことの不可能性としての死だからである。

というブランショの言葉をメモ。

Sunday, April 15

リビングに新しいソファ。けっこうな出費であるけれどおそらくは今月の残業代だけでお釣りがくるだろう。夜、宅配ピザを血迷ったサイズで注文してしまい胃がもたれながら『有頂天時代』(ジョージ・スティーヴンス/監督、1936年、アメリカ)を鑑賞。