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Monday, July 11

残業とピンチョン。本日の私は労働外においてトマス・ピンチョン『V.』(小山太一+佐藤良明訳、新潮社)を読み、労働内において残業をした。夜ごはん、白米、味噌汁、鯵の干物、白菜の漬物、麦酒。デザートにメロン。

Tuesday, July 12

定時帰宅とピンチョン。本日の私は労働外においてトマス・ピンチョン『V.』(小山太一+佐藤良明訳、新潮社)を読み、労働内において所定の勤労時間をもって仕事を完結しそそくさと帰宅した。夜ごはん、冷たい蕎麦、白菜の漬物、麦酒。ウラジーミル・ナボコフ『ローラのオリジナル』(若島正訳、作品社)を読む。

Wednesday, July 13

人身事故による電車遅延とピンチョン。本日の私は空き時間にトマス・ピンチョン『V.』(小山太一+佐藤良明訳、新潮社)を読み、人身事故の影響でなかなか動かない電車のなかでも『V.』を読み続けるのだがいまだ読み終わらず、それにしても『V.』はふつうにおもしろいというか、ふつうにおもしろくて困る事情などないのだけれど、たとえば

だが〈処刑台号〉の館長、C・オズリック・リッチ海軍中佐には弱みがあった。部下という部下、全員がなにかしらの常習的規律違反者だったのだ。機関科下士官候補のベイビー・フェイス・ファランジは、折々バブーシュカをかぶって、列をなした小隊全員に自分の頬っぺたをつねらせるのが趣味。甲板猿のレイザーは、中心市街地に建つ南軍記念碑に猥褻な落書きをし、拘束服を着せられて連れ戻されたりする。その友達のテレデュは、あるとき工作班に入れられるのを嫌って冷蔵室に隠れたらそこが気に入り、生卵と冷凍ハンバーガーで食いつないで、二週間後になって警備主任率いる一団に引きずり出された経歴をもっている。操舵手グルームズマンに至っては、毛ジラミにやられて船内病室を第二の寝床としていた。この毛ジラミ、衛生班長が直々に処方したシラミ殺しを食べて繁殖したという強者であった。

とか、ふつうにおもしろいじゃないかこれは。

夜ごはん、グリーンカレー、麦酒。

Thursday, July 14

『V.』を読了。「トマス・ピンチョン全小説」の新潮文庫落ちを気長に待ちながら、高価な上下巻からなる単行本『V.』を図書館に返却。ところでエージェントでピンチョンの妻でもあるメラニー・ジャクソン経由でピンチョン本人もおそらく了解しているのだろうけれども、新潮社の「トマス・ピンチョン全小説」という企画が「全小説」ときっぱり宣言してしまっているのが気になって、仕事のはやい日本の翻訳者たちによってぞくぞく刊行されている「全小説」だが、「全小説」の完結より先にいやがらせのように長編小説を立てつづけに三冊くらいだして「全小説」の企画構想を台なしにするようなことをしてくれないだろうかピンチョン、と思う。

夜ごはん、白米、味噌汁、葱と鰹節の冷奴、鯵の丸焼き、白菜の漬物、麦酒。

Friday, July 15

薔薇が枯れた。『我が闘争』(エルウィン・ライザー編集、1960年、スウェーデン)を鑑賞。ヒトラーについてのドキュメンタリー映画。なんで製作国がスウェーデンなのかと不思議に思って調べてみたら映像を編集したのが戦時中にスウェーデンに亡命したドイツ系ユダヤ人。

ツタヤでふたたび借りた『アワーミュージック』(ジャン=リュック・ゴダール監督、2004年、フランス/スイス)を鑑賞。公開当時劇場で観たときも強く印象に残って今回観なおしてもまた印象に残ったのは、映画の終盤でゴダールが自宅かどこかの花壇にいるとき、ゴダールが屋根にゴチンとあたまぶつけてイテテテみたいな事態になるショットで、あれはいったいなんだろう。ゴダールのショートコント。それと、ちょうどかかってきた黒電話にゴダールはでるのだがその電話のケーブルが延長コードをつなぎまくってやたらに長いのだが、あれもまたいったいなんだろう。

夜ごはん、牛肉と小松菜としめじのパスタ、赤ワイン。

Saturday, July 16

朝、ラジオ聴きながら本の整理。本棚ではなく図書館で借りた数十冊を。昼過ぎに銀座へ。三笠会館のレストランでリゾットを食したのち、三越にある飲むお酢専門店OSUYAで「酢フトクリーム」をほおばる。「酢フトクリーム」である。注文するのが恥ずかしくなるような羞恥プレイのネーミング。食後、店をあとにして灼熱の銀座で怒涛のギャラリーめぐり。
「Ernest Hemingway by Robert Capa」(ライカ銀座店サロン)
「金瑞姫/ether」(ガーディアン・ガーデン)
「2011 ADC展」(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
「榮榮+映里/三生万物」(SHISEIDO GALLERY)
「秋修一/基点 1995」(銀座ニコンサロン)
「上田義彦/火山の島」(リコーフォトギャラリー RING CUBE)
「スタジオ アルクール パリとフレンチシネマ」(シャネル・ネクサス・ホール)
「香りをイメージする香水瓶」(ポーラ ミュージアム アネックス)
「佐藤允/初恋」(ギャラリー小柳)
「吉行耕平/The Park」(BLD Gallery)

ADC展ではじめて震災後のサントリーのCMを見るという自身の浮世ぶりがあらわになったのだが、展示されているほとんどの広告の存在をあきれるほど知らないとはいえ、たぶんこの広告のADは佐藤卓だろうと予想をつけたらやっぱりそうだったという無駄な知見はかろうじていまだ働いたりもする。先日有楽町の無印良品の花屋が重宝すると書いたそばから六月末で閉店する旨の通知。私の好むものがどんどん消滅してゆくという逆マーケティング。私がおいしいと思った菓子は真っ先にスーパーの棚から姿を消す。机上の花としてグズマニアを購入。グズマニアって日本語の響きとしては「グズ」の「マニア」としか思えず、「だめんず・うぉ~か~」のようなものを想像してしまう。夜ごはん、寿司、味噌汁、麦酒。

Sunday, July 17

美術展をふたつ。「ミン・ウォン/LIFE OF IMITATION」(原美術館)。「カレル・ゼマン展 トリック映画の前衛」(松濤美術館)。原美術館で飲んだ白ワインと三十度を超える気温で意識がやや朦朧となりつつの遊覧。夜ごはんは軽く済ます。胡瓜と味噌、ひじきの煮物、人参蒸し、鯵の丸焼き。麦酒を飲みながら『世に棲む患者―中井久夫コレクション』(ちくま学芸文庫)の「慢性アルコール中毒症への一接近法」に目をとおす。