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Monday, May 7

会社からの帰り道、沛然たる豪雨で傘をさしてもずぶ濡れ。

青山ブックセンター六本木店が閉店するとのこと。六本木のABCが輝いていた時代が過去、たしかにあった。それにしても公式ホームページにおける「表参道の青山ブックセンター本店に統合することとなりました」とはいささか強引な繕いの文章で、いったいなにをどう「統合する」というのだろう。

自宅の本棚にある映画関連の本をまとめ読みする。蓮實重彦と山田宏一の本で三分の一ほどの場所が占領されている映画棚から、山田宏一『シネ・ブラボー 小さな映画誌』(勁文社)を読み、つづけて淀川長治・蓮實重彦・山田宏一『映画千夜一夜』(中央公論社)を途中まで。『映画千夜一夜』は淀川長治による圧倒的な映画的記憶の披露と、ところどころで淀川長治が蓮實重彦の韜晦を茶化すくだりが読みどころである。

夜ごはん、醤油ラーメン、麦酒。

Tuesday, May 8

エルマンノ・オルミ死去の報せ。

山田宏一『シネ・ブラボー2 映画について私が知っている二、三の事柄』(勁文社)を読了。

教育問題に関してもいえることだが、労働問題もまた、じぶんの過去の経験をベースに語る人びとの意見は水掛け論しか招かないので、現状を精緻に突く実証研究以外認めんという態度でのぞみたい。経験主義的な印象論(というか精神論)は、議論を混乱させるだけである。

夜ごはん、白米、水菜と油揚げの味噌汁、豚肉と茄子の中華風炒め、わかめと紫たまねぎのサラダ、麦酒。

Wednesday, May 9

アメリカがイラン核合意から離脱。

朝から雨。雨の日の通勤は出社後の労働生産性がいちじるしく低下するので、雨が降ったら自宅待機を推奨する旨を、今般の働き方改革関連法案に追加してもらいたい。

会社の昼休みの時間をつかって断続的に読んでいた、星野太『崇高の修辞学』(月曜社) を読み終える。

「ウッディ・アレンという、ぼくに言わせればたんなる馬鹿ですけれども」と述べる蓮實重彦『映画はいかに死ぬか 横断的映画史の試み』(フィルムアート社)をちょうど読了したところで、夜、『カフェ・ソサエティ』(ウディ・アレン/監督、2016年)を見る。かわり映えしないといえばかわり映えしない、これまでと似た雰囲気の紙芝居のような映画を、80歳を超えてもなお飽きもせず撮りつづけるウディ・アレンのことは、けして嫌いじゃない。

Thursday, May 10

マレーシアの選挙で92歳のマハティール・ビン・モハマドが首相に返り咲くことに。マレーシアの首相の任期は5年。寿命が先か、任期が先か。

本日の読書は「説話論的」が炸裂している蓮實重彦『映画 誘惑のエクリチュール』(ちくま文庫)。

夜ごはん、サーモンのバターソテー、サラダ(サニーレタスとトマトとオリーブとハム)、バゲット、赤ワイン。

Friday, May 11

以前から酷かったとはいえ、ここ最近の麻生太郎の「余計なことをいう」頻度が只事ではない。いわなくていいことばかり口にしている。数で勝負したいのだろうか。ひとつひとつの舌禍を薄めてゆく作戦かもしれない。

蓮實重彦『ハリウッド映画史講義 翳りの歴史のために』(ちくま学芸文庫)と加藤幹郎『映画館と観客の文化史』(中公新書)を読む。前者は初読。後者は再読。

午後3時すぎ、六本木にてギャラリーをめぐる。「KAWS展」(ギャラリーペロタン東京)、「ミリアム・カーン photographs」(ワコウ・ワークス・オブ・アート)、「向山喜章 Maruyulate/Marugalate」(Yutaka Kikutake Gallery)、「西村多美子 旅人」(ZEN FOTO GALLERY)、「髙畠依子 泉」(シュウゴアーツ)、「ライアン・マッギンレー MY NY」(小山登美夫ギャラリー)。ライアン・マッギンレーの展示だけギャラリーにいる人の数がちがって大賑わい。

森美術館に移動して「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」を見る。見たかったのは建築展ではなくて、「MAMスクリーン」でやっている近藤聡乃の展示なのだが、近藤聡乃を見るには建築展を経由しないと辿りつけない仕組みなのだった。あわせて「アピチャッポン・ウィーラセタクン+久門剛史」の展示も。

AXISビルのタカ・イシイギャラリーで「吉野英理香 MARBLE」を見てから、タクシーで六本木から表参道に移動。車の運転をしないので一瞬で到着する距離だろうと勝手に想像していたら、意外と時間がかかる。運転手にご希望の道順はありますかと訊かれたが、免許をもっていない人間にご希望の道順などあるはずもない。表参道の交差点で降りて、ファーガス・マカフリー東京で「ロバート・ライマン展」を見る。

夜、川上庵で夕食。ホタルイカのバター醤油炒め、レンコンと海老の挟み揚げ、鴨南そば、麦酒。

Saturday, May 12

本と映画。アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』(小野正嗣/訳、新潮社)を読んで、エルンスト・ルビッチ『天使』(1937年)を見る。

Sunday, May 13

代々木公園で開催中のタイフェスに参戦。タイフェスでいつも不思議に思っているのは、行列のできている店と誰も並んでいない店のちがいがなんなのかよくわからないこと。人気店や有名店だから行列ができているのかといえばそう単純でもなさそうなので本日じっくり観察してみたところ、詰まるところ、人は誰かが並んでいるところに並びたがるので行列ができるという簡単な話だった。閑古鳥が鳴いているような店に数人が注文しだした途端、行列ができた。おなじようなメニューの店が並んでいる屋台では、人は安全策として、誰かが並んでいるところに並びたがる。

昼すぎから空模様が怪しくなるとの天気予報だったので、ある程度食べたところでそそくさと帰る。

自宅で読書。磯部涼『ルポ川崎』(サイゾー)を読む。本の内容よりも写真が細倉真弓であることに目がいく。酒巻洋子『フランス人と気の長い夜ごはん』(産業編集センター)を読む。文末を「というわけ。」で締める文体を、やたらと多用しているのが気になる。山口晃『すゞしろ日記 参』(羽鳥書店)を読む。山口晃の描く犬はかわいい。そのかわいさは本書所収の「ワンだふるアートワールド」で披露されているが、しかしこの連載、掲載誌は『SPUR』(集英社)である。『SPUR』で連載なんてやっていたのか。

夜ごはん、豚肩ロース蒸し、ミニトマトとパクチー、蛸と紫たまねぎのサラダ、麦酒。

パリでテロ。