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Monday, November 6

東京都写真美術館の発行する「ニァイズ」は、ある時期(61号)を境として作者カレー沢薫のコメントが短くなり、ある時期(81号)を境としてコメントがなくなった。カレー沢薫はもう書くことがなくなったのか。

『UP』11月号(東京大学出版会)が届く。

Tuesday, November 7

柔和な目元が特徴のサウジアラビアのムハンマド皇太子だが、政府は数十人の王族や閣僚や投資家を反汚職の名目で一斉に拘束した。強権的。優しそうな瞳に騙されそうになるが、人は見た目が9割でないことの事例である。

Wednesday, November 8

アジア各国の歴訪をトランプ大統領が普通にこなしておりつまらない。不規則発言を求む。

ところで、相も変わらずアメリカの貿易赤字を喧伝するトランプだが、ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』(間宮陽介/訳、岩波文庫)を読んでいたら貿易収支にかんする言及に出くわす。1936年に執筆されたトランプ批判。

およそ200年ものあいだ、経済学者も実務家たちも、貿易収支黒字国には特別の利益があり、収支が赤字になると、とりわけその赤字が貴金属類の流出を帰結する場合には、重大な危険をもたらす、という考えになんの疑問も抱かなかった。けれどもこの100年というもの、ずいぶん意見が多様化している。たいていの国の政治家や実務家は、その大多数が相変わらずこの古めかしい教義の信奉者であるし、イギリス、反対の見解の発祥の地であるイギリスにおいてさえ、彼らの約半数がそうである。しかるにほとんどすべての経済学者が、この問題に対する懸念は、ごく目先のことを考えるのではないかぎり、全くの杞憂にすぎないと考えている。外国貿易の仕組みは自己調整的であり、それに介入しようとする試みは単に無益であるばかりか、そのように試みる国々をたいそう貧困にする、なぜなら国際分業の利益を奪い取るから、というのがその理由である。

Thursday, November 9

歴史を俯瞰すれば猟奇的な殺人事件は稀に発生するものなので、このたびの神奈川県座間市での事件自体にさしたる驚きはなく、今後の「対策」を講じることも無駄でしかないと思うが、報道を概観するなかでひとつ目がいったのは、容疑者が一人目の遺体切断には三日かかったが二人目以降は一日でできるようになったと供述しているらしいことだ。凄惨な状況においても「生産性の向上」を発揮することに人間の不気味さを感じる。

Friday, November 10

会社帰りに「TOMORROWLAND」で冬のコートを買う。選んで試着してから購入までおよそ5分強という、店員に驚かれる決断の早さ。当初の予定では家に帰って食事のつもりが、紆余曲折あって品川の「AUX BACCHANALES」で夕食をとる。ステーキと赤ワイン。

Saturday, November 11

ファッション魂あふれる女子力を補給するために、『CLUÉL』12月号(ザ・ブックス パブリッシング)と『FUDGE』12月号(三栄書房)を読む。しかし女子力を補給しなければならない理由は特になく、そもそも女子じゃない。もっともファッション雑誌をぱらぱらとめくる行為は、それだけで愉悦である。

Sunday, November 12

成瀬巳喜男の『山の音』(1954年)で山村聰と原節子が歩いていた場所を思い起こしながら、紅葉する樹々を見るために新宿御苑を歩く。落葉を踏みながら苑内をぐるっと散歩。

昼食どきになったので、御苑近くの「curry草枕」でカレーを食べる。スパイスの効いたカレーを頬張りながら、カレー店とラーメン店は似ているなと思った。人気店は行列ができる。行列ができても回転は早い。大抵おっさん客がいる。食後、みんな鼻をかむ。

ルミネ10%オフに参戦するために、Newomanおよびルミネ新宿およびルミネ有楽町をまわって、衣料品の買いもの。夜、イトシアの「響」で夕食。