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Monday, October 9

東急電鉄が池上線の認知度を上げようと「フリー乗車デー」を実施していたが、最新号の『Hanako』(マガジンハウス)を読むと、おなじローカル線どうしの比較でいえば、街としての活況ぶりは世田谷線のほうが圧倒的である。

Tuesday, October 10

晴れて暑くなるとの天気予報は外れて、曇って涼しい。

深井晃子『きものとジャポニスム 西洋の眼が見た日本の美意識』(平凡社)を読む。歴史や美術や文学や哲学を専門とする人がファッションを論じる仕事はそれなりに存在するものの、歴史的パースペクティブを踏まえつつ現代にいたるまでの服飾史について、ファッションの側から語れる人、それもエッセイではなく学際的な書きものとして呈示する人は、日本では深井晃子くらいしか見あたらない。

Wednesday, October 11

選挙である。財源の不明瞭な教育無償化などせず、消費税増税に着手したうえで、基礎的財政収支の改善に努めるべき [1]という現実的だが凡庸な主張を誰もしない状況がすごい。現実感の乏しい夢のようなカネの話が飛び交っているのはさすが選挙である。

Thursday, October 12

佐々木悠介『カルティエ=ブレッソン 二十世紀写真の言説空間』(水声社)をおもしろく読む。アンリ・カルティエ=ブレッソンという20世紀を代表する写真家を主役にした書物をしらべると、これまでに日本語で執筆されたものは楠本亜紀『逃げ去るイメージ アンリ・カルティエ=ブレッソン』(スカイドア)と柏倉康夫『アンリ・カルティエ=ブレッソン伝』(青土社)くらいしかないという状況をずっと不思議に思っていた。日本の写真評論の土壌自体が必ずしも豊穣ではないというそもそもの事情があるとはいえ、なんで誰も書かないのだろう。

Friday, October 13

最新号のエコノミスト誌を読むと、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーについての記事はあるものの、文学賞を受賞したカズオ・イシグロについてはとくに言及がない。読書欄にでも記事が載るかと思ったのだが [2]

Saturday, October 14

神楽坂の「CANAL CAFE」で昼食ののち、ミヅマアートギャラリーで「青山悟 News From Nowhere」を鑑賞。青山悟の作品はいつもおもしろいのでたのしみにしている。地下鉄を乗り継いで銀座へ。ポーラミュージアムアネックスで「アルベルト・ヨナタン TERRENE」を見て、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで「組版造形 白井敬尚」を見る。途中、「AKOMEYA TOKYO」で野田琺瑯の容器を買う。無印良品に寄ったら1階で野菜を売っていておどろく。

Sunday, October 15

秋を通り越して冬を迎えてしまったような天気。冷たい雨が降っている。珈琲と読書。ベルンハルト・シュリンク『階段を下りる女』(松永美穂/訳、新潮社)と『中井久夫集1 1964-1983 働く患者』(みすず書房)を読む。

  1. 基礎的財政収支を黒字化することにそもそも意味はあるのかという根本的な議論も存在するが、それはさておき。 []
  2. blogではいちおう触れている。Kazuo Ishiguro, a Nobel laureate for these muddled times []