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Monday, August 21

MRI検査のため午前中は脳神経外科へ、午後は耳鼻咽喉科へ。世間的にはもう「若い」年齢ではないと思うが、病院にいくとよく言われるのは「まだ若いから(何々の疾患とは考えづらい)」というもの。よほど老人が罹る病状ばかりを発症するらしい。

東急線の駅で『SALUS』を、東京メトロの駅で『メトロミニッツ』を入手する。『SALUS』の特集は「はじめての器選び」。『メトロミニッツ』の特集は「料理と教室」。ちなみに最新号の『& Premium』(マガジンハウス)の特集は「ふだんの食卓、器と料理。」である。料理特集もだんだんネタの飽和状態に達してきたようだから、そのうち女性誌の持ちネタを組み合わせて、「器と運勢」とか「料理と猫」とか言いだしたりしないか心配である。

Tuesday, August 22

日本経済新聞夕刊の日替わりエッセイ「プロムナード」の連載陣は現在、山内マリコ、黒田龍之助、木皿泉、森田真生、阿古真理、ジェーン・スー。このなかでいちばん楽しみにしているのが黒田龍之助の回で、本日の原稿の冒頭、「運転免許を持たないわたしにとって、パスポートは貴重な身分証明書(写真付)である」というくだりに、たいへん共感をおぼえる。

Wednesday, August 23

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の見学を思い起こしながら、『優生学と人間社会 生命科学の世紀はどこへ向かうのか』(講談社現代新書)所収の市野川容孝の論考「ドイツ 優生学はナチズムか?」を再読する。優生学と人種主義は本来別物であり、ナチスと優生思想を直接的に結びつけて理解してしまうと、逆に優生学の歴史を見えなくしてしまうことを説明している。

Thursday, August 24

饗庭孝男『石と光の思想 ヨーロッパで考えたこと』(平凡社ライブラリー)を読む。

望まなければ他人の生活に深く干渉しないヨーロッパの精神のありようは、逆に彼らの心からの目にみえぬ心のやわらぎと湿度を奪い、乾いた「石」の夜を与えているのである。それが彼らに真夜中の叫びを必要とし、無名の異邦人との束の間の対話を呼んだにちがいない。ヨーロッパにおける「青春」のかがやかしい自由もまた、この生のおわりにおける各人の心の暗夜を持ってはじめてなりたつのだと思う。

ヨーロッパの昏さを描く本書のくだりを追いながら、それでも日本の湿ったやや面倒な関係性よりも、ヨーロッパの精神のありようのほうがよほど肌に合うなと思ってしまう。たとえ真夜中の叫びを必要とするとしても。

Friday, August 25

ワルシャワでトラムに乗ったとき、歩きスマホに対する注意喚起の映像が車内で流れた。ヘッドホンをしながらスマホのゲームに夢中な子供が街中を歩いているのだが、最後、子供はトラムに轢かれて死ぬ。容赦ない注意喚起。日本のように「「命とスマホ」どちらが大切ですか?」などというコピーで脅すまわりくどいことはせず、あっさり轢死である。

Saturday, August 26

旅の記憶の消えないうちに日記を更新する。

出国から帰国まですべてを自力でめぐる旅なので、旅の目的地(ワルシャワ、クラクフ、グダニスク)についてはかなり調べた。ポーランド語は読めないのでGoogle翻訳で英語に変換したりして可能なかぎり現地の情報を仕入れたのだが、少なからず日本語情報の恩恵にもあずかった。とりわけポーランド在住の日本人がインターネットで発信している情報は、ポーランドがいまいちマイナーな国ということもあってか、ポーランドを知ってほしいという熱量に溢れていることが多く、有益なサイトが目立つ。一方、まったく役に立たなかったのがポーランド政府観光局から届いた資料で、タダで貰っておいて文句をいうのもなんだが(送料はこちらが負担)、一瞥してまったく使いものにならない情報であることが伺えたので、さっさとネットでの渉猟活動に調査場を移した。『地球の歩き方』(ダイヤモンド社)もいちおう持参したが、これは「保険」みたいなもので、現地ではろくにひらいていない。それも3年前に買ったものを持って行ったら、ワルシャワの旧市街で食事処に迷った際に『地球の歩き方』に載っている店に行ってみたら潰れてちがう店になっていた。

Sunday, August 27

旅行の目的のひとつにポーランド版の『KINFOLK』とでも呼ぶべき「食」を特集する雑誌『USTA』の購入があった。代官山蔦屋でも売っているらしいのだが、洋書や洋雑誌にマージンを乗せすぎな代官山蔦屋で買う気にはなれず、ポーランドの現地価格でバックナンバーを含めてどーんと買うぞと意気込んで臨んだのだが、雑誌なので書店には最新号しかない。冷静に考えればあたりまえである。しかも小さな書店やカフェにしか置いていない雑誌なので、店舗にバックナンバーのある気配なし。最新号と別冊だけ買って日本に持ち帰る。

http://ustamagazyn.pl/

しかしこの雑誌、エディトリアルデザインは素晴らしいのだが、当然のごとくすべてがポーランド語なので、何が書いてあるのかさっぱりわからない。