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Monday, May 15

青山のKIHACHIにあったメニューを真似して、夕餉にそら豆入りのパスタをつくる。美味しい。

Tuesday, May 16

武田徹『日本ノンフィクション史 ルポタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』(中公新書)にある、正田美智子をめぐる当時の皇太子妃報道のくだりでおもしろいのは、小泉信三のお達しで報道協定が結ばれたなかで奮闘する『週刊明星』編集部の姿で、転んでもただでは起きない様子がなんともいじらしい。

しかし締め切りギリギリで記事がボツになったので、もはや別の取材ものでページを埋めることはできず、結局、梶山が神田の旅館に缶詰になって、梶謙介のペンネームで「皇太子の恋」なる小説を書いた。

ところが「内定した?! 皇太子妃。−−その人正田美智子」の広告を打とうとすると、今度は新聞社に掲載拒否された。皇太子妃報道について自粛するという協定を結んでいた手前、その広告は出せないというのだ。『週刊明星』編集部は、協定は新聞社が結んだもので出版社は埒外だと考えたが、広告面は新聞に帰属するとして新聞社は折れない。抵抗はかたくなで、結局、特集の部分に「創刊されて四ヶ月! 60万の愛読者をもつ、新しい時代の週刊誌 本誌独占の特集記事、文壇最高の小説陣、話題を提供するポスト欄」という意味不明のコピーと差し替えた広告しか打てなかった。読者が「何かあるな」と思うようにわざと白い部分を残したりする演出が精一杯だった。

Wednesday, May 17

『二つの政権交代 政策は変わったのか』(竹中治堅/編、勁草書房)を読む。しばしば指摘される、現行の安倍政権の政策は民主党政権の延長であるという点について、農業、電力、コーポレート・ガバナンス、子育て支援、消費税増税、安全保障、防衛、憲法解釈など分野別に区切って、学際的に分析した研究集成が本書である。おもしろく読んだのだが、本の表紙が安倍晋三と鳩山由紀夫の顔写真という、とてもじゃないけど自宅の本棚にしまいたくない代物なのが難点。図書館で借りた。

Thursday, May 18

井口武夫『開戦神話 対米通告を遅らせたのは誰か』(中公文庫)を読了。

皇室に関してはその外交的機能以外にはさしたる関心を有していないのだが、秋篠宮夫妻の長女が結婚するというニュースをめぐって、あらためて皇室報道の不可思議さを思う。たとえば日本経済新聞の朝刊には、書いている記者本人も馬鹿らしくなって新聞記者をやめたくなるんじゃないかと心配になるような叙述が、平然と載っている。

学習院女子高等科時代に茶道部の後輩だった女性(24)も「周囲に気を使う方」と話す。
眞子さまが高校2年の時、文化祭の打ち上げで東京・原宿にあるもんじゃ焼き店を訪れた際、「私が焼くね」と、テーブルを囲む部員らのためにもんじゃ焼きを作られた光景を覚えている。ゲームセンターでプリントシールを一緒に撮影するなど、気さくな一面もあったという。

Friday, May 19

浅田彰がフランス大統領選挙について書いていると教えてもらって、REALKYOTOの該当ページ [1]を早速読んでみる。この原稿で語られている政治や経済に関する認識は、国内外の報道を正確に読んでいれば導かれる知見のひとつであり、特段注目するような分析とは思えない。しかしながら浅田彰という人が特異だと思うのは、つぎのようなことを指摘するあたりである。

こうしたギリシア経済危機の重要性を考えれば、一度の例外を除いてドイツのカッセルのみで開催されてきた芸術祭ドクメンタを、今年はギリシアのアテネとカッセルの二カ所で開催するという決断は、たんなる政治的ジェスチャーを超えた意義をもつと言えるでしょう。

芸術分野の事情にあかるくて政治や経済にも精通しているという人は、いそうでいない。アート界隈の人びとは現実の政治や経済と距離をとる(というか無視する)のがスタイリッシュだと考えているような面もあって、基礎的な学習を放棄している人も多い。だからいざ現実の情勢に反応した時の姿が、きわめてナイーブなものになってしまうのは考えもの。

Saturday, May 20

IVY PLACEで昼食ののち、途中SPRING VALLEY BREWERYで休憩して、東京都写真美術館で「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」と「「いま、ここにいる」 平成をスクロールする」を見て、Rue Favartで夕食という、代官山から恵比寿をめぐる享楽の土曜日。

東京都写真美術館ではダヤニータ・シンの講演会にも参加した。英語によるダヤニータ・シンの講演は、プレゼンの見本のような丁寧かつ明瞭な発音でなされ、聴力が悪いうえに語学力のないわたしのような人間でも理解できたので、入口でもらった同時通訳のイヤホンは外して聴いた。しかし通訳は横田佳世子だったとあとで教えられ、横田さんの通訳だったらイヤホンをしたほうがよかったかもと思う。

Sunday, May 21

『CREA』(文藝春秋)の特集「東京ひとりガイド。」をひらけば平野紗季子がラーメンについて語り、『POPEYE』(マガジンハウス)の特別編集「シティボーイの東京グルメガイド2」をひらけば平野紗季子がデートのための食事処を紹介している。昨今の女性誌やカルチャー系雑誌における平野紗季子インフレはどうかと思う状況で、食に関してのテーマであればとりあえず平野紗季子を出しておけば見開き2ページが埋まるだろうという制作者側の安易さを感じなくはない。

  1. REALKYOTO:2017年フランス大統領選挙の後で []