319

Monday, April 24

会社帰りに立ち寄った書店で『MONOCLE』5月号と『OZ magazine』の鎌倉特集を買って帰る。

Tuesday, April 25

今年のみすず読書アンケートでいちばん興味を惹かれた本は、苅部直があげていた篠田英朗『集団的自衛権の思想史 憲法九条と日米安保』(風行社)。苅部直による紹介文は以下のとおり。

池内恵さんの表現を借りれば「戦後思想史の秘部・恥部」を大胆に明らかにし、徹底的に批判した本。安保法制をめぐるアベ政治批判の言説の奇妙さについて、憲法理解まで踏みこみながら、ここまで説得的に展開したのはすごい。

執筆者、読者ともに安保法案に対しては反対派が多数を占めると思われる『みすず』という場において、安保法案を支持する書物が紹介されているのに興味を惹かれて読んでみたら、ものすごくおもしろかった。国際協調主義に力点を置く立場から、内閣法制局に代表される東大法学部系の9条解釈を批判する叙述はスリリングで、安保法案反対から賛成に寝返りそうになるくらい魅力的な論旨が展開される。しかし、最終的には賛成に寝返らなかったのは、内閣法制局によるアクロバティックな9条解釈がきらいじゃないのもあるが、なにより国際協調主義なる立派な言葉がマジックワードにしか思えず、国際協調主義というものの信用性もまた、東大法学部系の信用性とまあ同程度かなくらいの印象だったため。

Wednesday, April 26

マリーヌ・ルペンがメランション支持者の票を取りこもうと躍起になっているとの報道があって、反EUという文脈では共通する基盤はあるかもしれないけれど、国民戦線の党首がトロツキー主義者の残党のような人物の票を狙うなどというのは異様な光景である。もっとも、右も左も極端に傾斜するとお互いよく似てくるので、似た者同士なのかもしれない。

Thursday, April 27

『図書』5月号(岩波書店)と一緒に臨時増刊として届いたのは、岩波文庫創刊90年記念「私の三冊」という冊子。このての特集は読んでいて愉しいが、同時に、じぶんがいかに古典を読んでいないかという現実を思い知らされる酷な面もある。

長谷部恭男が「私の三冊」で挙げているなかの一冊に、ジャン=ジャック・ルソーの『社会契約論』があって、

ルソーの言う「立法者」が人民に提案するのは、現代の我々が考える「法律」ではなく、厳密な一般性を帯びる社会の基本法である。この点の誤解が生み出した議論の混乱には恐るべきものがある。

と書いているのだが、このことは別の場所でも繰り返し長谷部恭男は書いており、本件についてよほど腹に据えかねているだろうか。

Friday, April 28

エコノミスト誌をiPadで。終末医療に関する記事に載っていたカイザー・ファミリー財団による調査結果のグラフがおもしろくて、できるだけ長く生きていたいと答える人は日本では20%以下だという(アメリカは45%くらいで、ブラジルは70%)。低い。しかし現実にできるだけ長く生きているのは日本人なのだが。

Saturday, April 29

午前10時半、東京駅下車。ヴァロットンの絵はやはり突出して妙であると再確認した三菱一号館美術館での「オルセーのナビ派展」から、歩いて銀座まで。

大型連休初日の銀座はかなりの人出で、行列のできている飲食店を横目に向かったのはオーバカナル銀座店。オーバカナルのいいところは座席数がたくさんあるので、余程の混雑でなければ席につけるところ。堅苦しくない雰囲気もいいし、値段も高くないし、食事は美味しいし、料理はすぐに出てくる。いったい厨房はどうなっているのかと思うほど、すぐに出てくる。オムレツとサラダとバゲットと赤ワイン。

資生堂ギャラリーで季刊となった『花椿』を入手するとともに「椿会展2017」を鑑賞。畠山直哉の写真をじっくり見る。

どんなもんだろうと思ってできたばかりのギンザシックスにも立ち寄ったのだが、辟易するほどの混雑ぶり。みんな来ちゃった。6階にある蔦屋書店で杉本博司、名和晃平、蜷川実花というたいへんカネの匂いのする展示を見てから、ライカの売場で開催されているマーク・デ・パオラ写真展を見る。ニューヨーク・ファッションウィークの舞台裏を撮影した写真で、これがとてもよかった。大混雑のギンザシックスのなかでこの場所は誰もいなかったけれども。

夜、テレビのある状況にいたのでNHKを見る。天皇退位をめぐる有識者会議の結果を踏まえて、象徴天皇を議論する特集番組が流れる。出演者のひとり、片山杜秀のおでこに蝿が止まったのが印象に残る。

Sunday, April 30

川上弘美『ぼくの死体をよろしくたのむ』(小学館)を読む。18本の短編のうち14本の初出は『クウネル』だが、版元は小学館。

田園調布にあるPrecceとMAISON KAYSERとMetzgerei SASAKIで飲食物を調達して、砧公園でピクニック。田園調布から砧公園までのバスは結構時間がかかるので、東急東横線(副都心線)で明治神宮前まで行って、代々木公園に向かったほうが楽なのではという指摘が出る。