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Monday, September 26

喉が痛くて身体が怠い。これは駄目だと会社を休む。第一三共ヘルスケアの「ルルアタックEX」を飲んで、終日安静。薬を飲む際、錠剤に含まれる成分をインターネットで調べるのがちょっとした趣味のようになっているのだが、薬剤情報を渉猟していたところ、トラネキサム酸が喉に効く風邪薬として使われているのは日本だけという話を知る。ちなみにトラネキサム酸の開発者は日本人で、岡本彰祐。ということも病床で調べた。インターネットがあると安静から程遠くなる。

Tuesday, September 27

トラネキサム酸の効果はまだ出ず、喉の痛みは治らない。

クルム伊達公子が離婚したらしい。著名人の結婚・離婚をめぐるゴシップ的な芸能ネタはさておき、この報せを聞いて、最近恵比寿にオープンした伊達公子監修のパン屋「フラウクルム」の店名はどうするのだろうと他人事ながら気になる。訪れる者に複雑な感情を喚起させる店名を今後も存続させるのだろうか。

Wednesday, September 28

築地市場の豊洲移転問題をめぐって、前東京都知事の石原慎太郎が批判の矢面に立たされている。長期にわたる石原都政がまるで幻であったかのように、現在の石原慎太郎にかつての威光はない。ごく凡庸な老いた後期高齢者である。権力の中枢にいた人物が身を引いたあとも存在感を示しつづけるのは例外的なことかもしれなくて、たとえば小泉純一郎にしてもかつての輝きはなく、もう完全に過去の人となっている。そう考えると、森喜朗はすごい。首相経験者という以外に特筆すべき点のまるで見あたらない人物が、いまなお影響力を誇っているのは特筆に値する。悪い意味で。

Thursday, September 29

体調悪化。寝込む。

Friday, September 30

ジェイムズ・ジョイスが『ユリシーズ』を上梓するまでの紆余曲折と出版後の騒動を活写したケヴィン・バーミンガム『ユリシーズを燃やせ』(小林玲子/訳、柏書房)を読了。おもしろかった。知られている話ではあるが、ヴァージニア・ウルフと『ユリシーズ』の関係について書かれた箇所を興味ぶかく読む。ウルフは『ユリシーズ』が嫌いだった。ウルフの自宅を訪れたT・S・エリオットが『ユリシーズ』を絶賛するものだから読んではみるものの、「無知で下品な本に見える。この本を書いたのは独学の肉体労働者で、彼らがどれほど悲惨な存在かは誰もが知っている。エゴイスティックで、しつこく、粗野で、鼻っ柱が強く、結局のところ吐き気を催すような存在だ」と日記に綴るほど嫌いで、嫌いながらもなんとか理解しようと読み込むもののやっぱり嫌いで、最後までウルフは肌に合わなかっただろうと思われる。しかしウルフは数年後、『ユリシーズ』からの影響をウルフ流に咀嚼したような小説『ダロウェイ夫人』を書いた。

Saturday, October 1

休日出勤。誰もいない会社でしばし労働。

仕事を終え、新宿アルタにあたらしくできたHMVのアナログレコード専門店に赴く。本日オープンということもあってなかなかの賑わいを見せており、客層も老若男女、と書きたいところだが「女」の姿はほとんど見あたらず、店内にいるのは「老若男」ばかりだ。レコード女子はどこにいる。探していたレコードが何枚か見つかり、とくに探していたわけではないものの所有することに異論はない名盤を数枚携えてレジで会計を済ますと、それなりの散財に。

Sunday, October 2

紫キャベツを茹で、バルサミコ酢と和えてから、軽く黒胡椒を振っただけの品をつくる。美味しい。学芸大学駅ちかくの「LA PETITE EPICERIE」で購入したバルサミコ酢は結構なお値段の代物だったので、これで美味しくなかったら困るというものだが、『ニュー スタンダード ディッシュ』(柴田書店)で「値段も味もいろいろだけれど、一度に大量に使うものではないので、質の良いものを選びたい」とバルサミコ酢について語る長尾智子の教えが正しいことが実証された。