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Thursday, February 25

午前6時半、起床。ベランダに洗濯物を干そうと窓を開けたら妙に視界が明るく、なんだろうと思ったら雪が降ったのだった。車道に停まっている赤い車のボンネットが白くなっているのを見て気づいた。空は薄水色で、桜色の雲がほわほわと流れていた。

Friday, February 26

東京ステーションギャラリーで「ジョルジョ・モランディ ー 終わりなき変奏」を観る。2011年、東日本大震災であえなく中止となってしまったモランディの展覧会、当時のそれと展覧会企画・構成は違うと思うのだけど、何にせよ、このたびやっとまとまってモランディの絵を観ることができた。作品を観ている間ずっと、静かで平らかな時間が流れていた、日々の鬱々とした澱みが風に巻き上げられる砂のように散って消えた気がした。表面に溝のある白い瓶、溝の入った球体、穀物の計量器である金属の円筒(望遠鏡のように縮めたり伸ばしたりできる)、金属の円筒の上に逆さまにしたじょうごを溶接したモランディ自作の器、銅製のソースパン、透明な瓶に顔料を流し込んで煉瓦色に変えた瓶、ペルシャ語の文字が書かれた壺、青い縞模様の花瓶、縁の赤い小さなカップ。器に対する執拗な情熱。今回、風景画を初めて観たけれど、静物画でやろうとしていることが、結局風景画でもなされているのだとわかった。花の絵は素晴らしい。親密さと寂しさと。なんと造花を描いていたのか! 花の上にも積もる埃。解説のペーパーに「溝の入った球体(玩具の一部と言われています)は2点の作品に登場します。モランディは同様の球体を少なくとも3つ持っており(…)」と書かれてあり、それを読んでそうかー3つ持っていたのかーとほっこりしてしまったのは、わたしだけだろか。わたしもあの球体ほしい、レモン絞り器みたいなやつ。アントニオ・ロペスの展覧会の時もそうだったけれど、ずーっと油彩画を観てきて水彩画が現れると、なんだか瑞々しい気持ちになる。水彩画なだけに。それにしても花の絵、よかったな、もともと花瓶にいけられた花の絵が大好きなのだけど、最後、立ち去り難かった。映像を観たあと、もう一度展示室に戻って最後の花の絵を観て出てきた。ミュージアムショップで図録を購入。

その後、OAZO丸善に行って、写真集『自然の鉛筆』を買う。

Sunday, February 28

渋谷哲也『ドイツ映画零年』(共和国)と、残り数ページを残してしばらく寝かせていた『ユリイカ』2016年2月号「原節子と〈昭和〉の風景」(青土社)を読了。『ドイツ映画零年』は名著であり、「原節子と〈昭和〉の風景」もまた、素晴らしい特集だった。