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Monday, April 18

東日本大震災の影響で当時お蔵入りになったものの、インターネット界隈を中心に話題となった九州新幹線のCMが、熊本地方が被災したいま、ふたたび脚光を浴びているらしい。というわけで、CMの発想源であるところのポール・フスコの写真集『RFK』を本棚からひっぱりだす。銃弾に斃れたロバート・ケネディの棺を運ぶ葬送列車から、見送る沿道の人びとを撮影した圧巻の写真集。九州新幹線のCMは、ポール・フスコの写真を知っていればこれが元ネタであることは一目瞭然なので、パクリといってしまえばパクリであり、大変わかりやすくあからさまな引用ではある [1]。九州新幹線のCMには特段何も思わないけれど、パクリに関してきわめて喧しい世の中になっているにもかかわらず、このCMにかぎって礼讃ばかりなのはいささか気味が悪く、大衆の「感動」はまったく信用できないと思ってしまう。

朝食、クロワッサン、茹で卵、珈琲。昼食、弁当。夕食、ピーマンと小松菜のトマトカレー、サニーレタスと新玉葱ときゅうりのサラダ、麦酒。昨晩のカレーの残りに野菜とスパイスを加えたはよいが、カイエンペッパーの適量がいまいちつかめず、相当に辛いカレーができあがった。

ジャズに関する生き字引のような瀬川昌久の本『瀬川昌久自選著作集 チャーリー・パーカーとビッグ・バンドと私 1954-2014』(河出書房新社)を読む。冒頭に掲げられた1950年代のニューヨーク滞在記と、巻末に添えられた大谷能生の司会による蓮實重彦との対談が抜群におもしろかった。

Tuesday, April 19

朝食を食べながら録音しておいた「SAUDE! SAUDADE…」を聴いたら、先週危惧したヘルシンキ編のCMがちゃんと流れた。しかしこれは、聴けば聴くほどフィンランドにずいぶん失礼なCMではある。好きだけど。

簑原俊洋『アメリカの排日運動と日米関係 「排日移民法」はなぜ成立したか』(朝日新聞出版)を読了。日本人移民の苦難の歴史を綴った話だったらあまり食指は動かなかったかもしれないが、本書の主眼はそこにはなく、移民をめぐっての政治や外交に焦点をあてる日米関係史だったので、たいへん興味ぶかく読んだ。

細野晴臣のラジオ「Daisy Holiday!」は今週も中沢新一がゲスト。それにしても、中沢新一は常識的に考えればあらゆる言論活動から干されても不思議ではない黒歴史をもちながら、いまなお、のうのうと生き延びているのがすごい。その膂力は、政治力がどうこうという範疇を超えている気がする。中沢新一には是非、その「延命力」について一冊書いてもらいたい。

朝食、目玉焼き、ソーセージ、サニーレタスときゅうりのサラダ、バゲット、珈琲。昼食、弁当。夕食、浅蜊とパプリカのパエリア、ほうれん草とソーセージのコンソメスープ、赤ワイン。

Wednesday, April 20

菊地成孔『レクイエムの名手 菊地成孔追悼文集』(亜紀書房)を読み終えた日の夜、TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」を聴く。

朝食、チーズトースト、グリーンリーフ、茹で卵、珈琲。昼食、弁当。夕食、焼きそば、ネギわかめスープ、麦酒。

Thursday, April 21

アメリカ大統領選挙は、誰を支持するかではなく、誰が嫌いかを言い募る争いになってきた。

定期購読は解約したもののメルマガはそのままなので「クウネル友の会便り」は届く。先日届いたメルマガを読むと、次号の特集のひとつにあったのは「50代からの離婚について」。いよいよライトな『婦人公論』化に拍車がかかっている。

朝食、ソーセージとピーマンとトマトのグリル、バゲット、珈琲。昼食、弁当。夕食、牛肉のステーキ、玉葱としめじのコンソメスープ、トマトと玉葱とほうれん草のグリル、バゲット、ツナ、赤ワイン。

Friday, April 22

プリンス死去の報せ。

エコノミスト誌の訃報欄は毎週ひとりを記事にする。もちろん著名人も登場するが、知らないなあという人もたくさん出てくるので毎度こちらの無知が露呈するのだけれど、今週はロンドンの地下鉄のアナウンスを担当していたPhil Sayerという人の追悼文で、ロンドンにいちども行ったことのない人間からすれば知らないにもほどがある人の訃報である。

このたびの地震関連の情報を追うなかで、地震学者のロバート・ゲラーがハザードマップは無駄だと言っているのを知ったのだが、エコノミスト誌の地震に関する記事でもおなじことをコメントしていた。

朝食、くるみパン、茹で卵、林檎、珈琲。昼食、弁当。夕食は近所のカフェで。パスタ、キッシュ、ブルスケッタ、シメイホワイト。

Saturday, April 23

朝食はトースト、ブルーベリージャム、目玉焼き、珈琲。午前9時すぎ、ひさしぶりに新宿駅で降りたら、新南口の大規模な工事が終わって「NEWoMan」という商業施設ができあがっていた。飲食店がいくつも並んでいる。週末に多発するカフェ難民状態は解決するだろうか。スタバで休憩しながら外の様子を眺めていると、ひっきりなしに外国人観光客がやってくる。線路の見える方面に三脚を立てて、熱心に一眼レフカメラをセットしている外国人がいた。撮り鉄か。

渋谷経由で代官山へ。ART FRONT GALLERYで康夏奈(吉田夏奈)「コズミックカクタス」を見てから、蔦谷書店へ。ジャック=アンリ・ラルティーグの写真集『LIFE IN COLOR』が棚に飾られており、素晴らしい写真集ですぐに欲しくなるも、値段を確認するとこれはAmazonかAbeBooksで買うほうがやすいだろうと思ってiPhoneで調べると、案の定Amazonで買ったほうが安いのでその場で注文する。必殺リアル書店潰し。洋書や洋雑誌に関して日本の書店がインターネット経由での購入より安価にできないのは商売の構造的にしかたがないのかもしれない。しかし、送料を含めても海の向こうから取り寄せるほうが安いという事態は、その構造がまちがっているように思えてならない。

しばし雑誌を中心に立ち読みののち、IVY PLACEで昼食をとる。ハンバーガーとサラダとビール。まわりを見渡すと若い女性同士の来店が多い。IVY PLACEの雰囲気は好きだけれど、一方で飲食の値段はちょっと高いと思うのだが、若い女性たちはそんなに金があるのだろうか。食後、代官山の洋服店や雑貨店を少しまわる。

代官山から学芸大学に移動する。Blitz Galleryで開催中のマイケル・デウィック写真展の最終日に滑り込んでから、CLASKAへ。都内を一望できる屋上テラスにのぼって写真を撮ってから、Gallery & Shop “DO”でGOOD WEAVERのスニーカーを買う。白はもっているので今度は黒を。歩き疲れたのでkiokuhで休憩。ビール。結婚パーティーをやっていたらしくそれっぽい服装の人々がわさわさと出現。オリーブオイルの店LA PETITE EPICERIEとオーガニック食材の店FOOD & COMPANYをめぐってから、古本屋の流浪堂に到着。小野博『In-between 4 オーストリア、スロベニア』(EU・ジャパンフェスト日本委員会)と『ベンヤミン・コレクション 2 エッセイの思想』(浅井健二郎/編訳、ちくま学芸文庫)を買う。

流浪堂の棚で驚いたのは、『ココロの四季』という本の存在で、写真は鈴木理策である。そんな写真集知らんぞと思ったら、東京海上日動の採用担当者が就職活動中の学生に向けてつくった写真集で、非売品のものらしい。『ココロの四季』という微妙にもほどがある書名もすごいが、中身を読むと、意識高い系のアメーバブログ風ポエムのような言葉と一緒に、鈴木理策の写真がならんでいる。なんでこんな仕事を引き受けたのだろう。若い頃にやった仕事なのかと思ったら、刊行は2007年。最近である。いよいよ謎が深まる。3000円の値付け。3000円出してまで買おうとは思わなかったので、棚に戻した。資料的な価値を鑑みて欲しい人は、流浪堂に急いだほうがいい。

夕食は、ベーコンと長葱のアンチョビレモンパスタ、麦酒。本日の歩数は17045歩。

Sunday, April 24

小雨が降っていて洗濯ができない。食材の調達のため、近所のスーパーまで買いもの。『LIFE IN COLOR』が届く。新聞を読む。今週の日記を書く。四六時中ラジオを聴いて、一日が終わる。朝食、トースト、ブルーベリージャム、茹で卵、珈琲。昼食、コリアンダーチキンカレー、らっきょう、麦酒。夕食、大葉のペペロンチーノ、ニシンの酢漬け、紫玉葱と人参のサラダ、バゲットとパテ、赤ワイン。

  1. インターネットで拾った情報で原典を確認してはいないのだが、『日経デザイン』(日経BP社)2012年5月号で、CMを制作した電通の担当者はポール・フスコの写真をヒントにしたと語っているらしい。 []