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Monday, April 11

カレーづくりは簡単だと聞いていたが、それは市販のルーを使えば簡単なのであって、スパイスだけでつくるとなると何をどのように足すかが重要になるのだと昨晩カレーをつくり終えたあとに今更ながら気づく。カレーは足し算の料理だった。やや不発に終わった昨夜の味を挽回すべく、本日の夜は、残りもののカレーにさまざまな足し算を施し、とても美味しくできあがった。美味しくなったのはいいが、量を盛りすぎてしまったがために、食べすぎで苦しい。

今後のカレーづくりに関する信用のおけそうな参考文献として、村上愛子『鎌倉OXYMORONのスパイスカレー』(マイナビ)を会社帰りに買う。

カレーを食べながら、録音しておいた細野晴臣のラジオ「Daisy Holiday!」を聴いたら、ゲストに中沢新一が登場。『チベットのモーツァルト』刊行時のころの話をしている。

夜、村上陽一郎『科学史の逆遠近法 ルネサンスの再評価』(講談社学術文庫)を途中まで。すっかり内容を忘れていたが、久しぶりにページをめくってこんな濃厚な本だったのかと驚く。怒濤の固有名詞の羅列に疲れをおぼえるほどの濃密な書物。

『科学史の逆遠近法』のボリュームたっぷりの神秘思想やヘルメス主義の諸相から避難するように、薄味のものをと最新号の『POPEYE』(マガジンハウス)を手にとる。特集は「東京」で、このてのものは情報勝負だと思うのだが、なぜだかあんまり情報量を感じない、ゆるい原稿に目をとおす。

朝食、ソーセージとピーマンとトマトのグリル、レタス、バゲットとパテ、珈琲。昼食、弁当。夕食、ポークカレー、サニーレタスと新玉葱のサラダ、らっきょう、麦酒。

Tuesday, April 12

J-WAVEの「SAUDE! SAUDADE…」で流れる日本通運によるラジオCMの最新版が、なぜか今週はオンエアされず。CMの舞台はヘルシンキなのだが、いかにフィンランドのグミが吐きたくなるほどまずいかを喋っているだけのCMなので、聴取者から苦情でも来たのだろうか [1]

『科学史の逆遠近法』を読了し、 ダニエル・アラルコン『夜、僕らは輪になって歩く』(藤井光/訳、新潮クレスト・ブックス)を半分ほど読む。『夜、僕らは輪になって歩く』には、あまり惹かれず。

iPhoneに歩数計の機能が付いていることを知る。計測された数値はどれほど精確なのか疑問に思ってネットで調べると、実際の歩数と比較して実験している人がいて、なかなか精度の高い数値をはじき出すらしい。きょうは4013歩、きのうは昼休みに図書館に出向いたので少し多くて5772歩、鎌倉を散策した先週の土曜日は17915歩。平日はほとんど歩いていないことが判明。

朝食、チーズトースト、グリーンリーフ、ミニトマト、茹で卵、珈琲。昼食、弁当。夕食、白米、豆腐とみつばの味噌汁、ごぼうの漬物、しめじのナムル、冷奴とキムチ、かます、麦酒。

Wednesday, April 13

四方田犬彦『土地の精霊』(筑摩書房)のオスロの項で紹介されていた、佐伯一麦『ノルゲ Norge』(講談社文芸文庫)を読んだ。染色家の妻の留学に付き添うかたちで、一年間滞在したノルウェーでの経験をもとにした私小説で、オスロという場所を見事に描いた作品と評価されているだろうし、それはそのとおりなのだが個人的にはそれよりも、かつて電気工だった職歴も関係して著者は機械のたぐいに詳しくて、電気やパソコンがらみの記述に感銘を受ける。持ってきたノートパソコンが不調になり、OSの再インストールを試そうとするものの、プロダクトIDを忘れてしまったという状況のくだりがこれである。

レジストリの内容を見るためには、レジストリエディタを起動させなければならない。おれは、[スタートメニュー]→[ファイル名を指定して実行]を選択した。そしてあらわれた[名前]の記入欄に[regedit]と入力し、[Enter]キーを押す。レジストリエディタの画面になり、マイコンピュータから、[HKEY_CLASSES_ROOT][HEKY_CURRENT_USER][HKEY_LOCAL_MACHINE][HKEY_USERS][HKEY_CURRENT_CONFIG][HKEY_DYN_DATA]の六つのフォルダに枝分かれしているのがわかった。その中のどこかに、このノートパソコンのプロダクトIDが絶対に隠れているはずだ、とおれは祈るように思った。(P.350)

Windowsのレジストリについて記述している、それも「ファイル名を指定して実行」からregeditと入力するさまを描写した小説を、初めて読んだ。

朝食、ハムとトマトと人参のグリル、サニーレタス、バゲットとパテ、珈琲。昼食、弁当。夕食、ハムと小松菜のアンチョビパスタ、新玉葱とサニーレタス、赤ワイン。

Thursday, April 14

内藤正典『トルコ 中東情勢のカギをにぎる国』(集英社)を読む。込み入ったトルコの歴史と政情を、一般向けの書籍として平易に(といっても議論の水準を落とすことなく)記述する手腕に舌を巻く。

朝食、チーズトースト、サニーレタス、茹で卵、珈琲。昼食、弁当。夕食、鶏肉と青梗菜の醤油ラーメン、きゅうりの酢漬け、麦酒。

Friday, April 15

昨晩、熊本で強い地震があった模様。21時26分頃とのことだが、もう半分寝ている時間なので、知らないままきょうの朝に情報を得る。熊本については吉本由美と細川亜衣が住んでいるくらいの知識しかない、つまりは無知だが、最初に入った会社の出張で訪れたとき、熊本市現代美術館で「横尾忠則 熊本・ブエノスアイレス化計画」を見たことだけは、いまだによくおぼえている。2005年のこと。

iPadでエコノミスト誌を読む。自閉症患者を労働力として積極活用しないのは経済的な損失という記事が冒頭に。

朝食、目玉焼き、ハム、キャベツ、バゲット、珈琲。昼食、和幸でとんかつ。夕食、ラム肉のステーキ、アスパラとピーマンとトマトのパエリア、きゅうりと新玉葱のサラダ、苺のショートケーキ、赤ワイン。

Saturday, April 16

深夜ふたたび熊本で強い地震。気象庁の発表によれば、本震と思われたものは前震だったとのこと。後出しジャンケンのような通知だが、地震に関して、気象庁は何を言っても袋叩きにあうの雰囲気なのでいささか不憫ではある。別段同情はしないが。

朝食、くるみパン、珈琲。昼食、わかめごはん、小松菜の味噌汁、鯵のひらき、きゅうりとミニトマト、緑茶。ののち、怒濤のギャラリーめぐり。恵比寿にて、POST/limArtで奥山由之「THE NEW STORY」、NADiff a/p/a/r/tでロベール・クートラス展『小部屋のクートラス』、G/P galleryで細倉真弓 「CYALIUM」。外苑前にて、MAHO KUBOTA GALLERYで長島有里枝「家庭について/about home」。北参道にて、タカ・イシイギャラリーで村上華子「ANTICAMERA (OF THE EYE)」、小山登美夫ギャラリーでベンジャミン・バトラー「Trees Alone」を見る。銀座にて、Art Gallery M84でベッティナ・ランス写真展「密室/Chambre Close」、AKIO NAGASAWAで森山大道「SCANDALOUS」、松浦恵介「両界 多摩川」、シロタ画廊で入江明日香展、ギャラリー小柳で花代&沢渡朔「点子」。都内を歩きまわったので、iPhoneの歩数計は19083歩を記録。平日の運動不足を土日に解消している。

外苑前のインテリアショップACTUSでワイングラスとコースターを、銀座の無印良品でステンレスの両手鍋を買った。

夕食は、銀座コリドー街のBelgian Brasserie Court Antwerp Sixにて。ベルギービール各種を三杯、ムール貝の白ワイン煮、フリッツ、シコンのグラタン、ホタルイカと野菜のフリット、パテ・ド・カンパーニュ。食べすぎである。

Sunday, April 17

朝食はヨーグルトと珈琲。近所のスーパーに食料品調達のため買いものに出掛け、道すがらカフェで珈琲とマフィンの休息ののち、花を買って帰宅。昼食は、大根と人参のおかゆ、梅干し、緑茶。

雨が降り、風が強く吹くかと思えば、青空がのぞく。変な天気。

夜、カレーをつくる。「男の料理」という言葉が嫌いで、対の概念として「女の料理」があるかといえばそうとは言えず、微妙なジェンダー的差異への鈍感さというものが「男の料理」には宿っている気がして、どうにも敬遠してしまうのだが、カレーづくりも「男の料理」の代名詞風情が漂うのでこれまであまり興味が沸かなかった。そもそもカレー好きでもないし。しかし丁寧につくりかたを解説している『鎌倉OXYMORONのスパイスカレー』を参考にしてチキンカレーをつくってみたら、とても美味しくできたので、カレーづくりも悪くないかもしれない。凝ろうとは思わないけれど。付け合わせに、サニーレタスと新玉葱と人参のサラダ。飲みものは、麦酒。

  1. 「世界日通」 ラジオCM 「クロスボーダー・ワールド/ヘルシンキ」篇(120秒) []