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Monday, December 28

いよいよ年の瀬感が募ってきて、早く日常に戻りたいなあと思う。花屋で、お正月の花を買う。千両と、赤と黄色が混ざった大ぶりの蘭。

尾仲浩二『あの頃、東京で・・ 改訂版』(KAIDO BOOKS)読了。わたしがいちばん好きな写真家は尾仲浩二であるから、当然彼の撮る写真が好きなのだが、彼の書く文章もまた、好きだ。読みたいと思わせる文章。もっともっと文章も書いてほしい。もちろん写真もたくさん撮ってほしい。尾仲浩二が1988年4月1日に開いた自主ギャラリー「街道」で、尾仲浩二がいちばん長い時間を一緒に過ごしたのが中平卓馬だということを、この本を読んで知った。中平卓馬は尾仲浩二が写真展をするたびに来てくれたという。「中平さんのことを知らない人たちは、いつも街道に来ている変わったおじさんだと思っていただろうな、きっと。」(p.75)

尾仲浩二の初写真集『背高あわだち草』の、かなり長い跋文を書いたのが中平卓馬なのだけど、印刷の締め切りに間に合わず、帯文で少し使うだけになってしまい、さらにその元原稿をなくしてしまったのが今でも悔やまれる、とあるが、わたしだって泣きたいほど悔やまれるわ、それは。読みたかったな、中平卓馬の跋文。元原稿をなくしたということは、どこかに複製はあるのだろうか。もう世に出ることはないのだろうか。

Tuesday, December 29

あしたからおせちづくりを始めるので、きょうはまず、椎茸(どんこ)を水に浸して戻しておく。

『彼岸花』(小津安二郎監督、1958年)を観る。佐分利信がおっかない役をやるとほんとに恐いわ。ガタイもいいし。女優たちの演技は素晴らしい。田中絹代、山本富士子、浪花千栄子、有馬稲子、それぞれの持ち味で生き生きと演じていて見惚れてしまう。

Thursday, December 30

朝一番に黒豆を煮る。相変わらずどれが灰汁なのかわからない。これは泡なのでは? とすくうたびに思う。胚芽ブレッド、ブルーベリージャム、トマトとグリーンリーフのサラダ、ゆで卵、ヨーグルト、珈琲の朝ごはんを食べ終える頃、豆が煮あがる。屋上にシーツを干しに行く。今年最後の洗濯。『永遠のモータウン』(ポール・ジャストマン監督、2002年)を観る。ラスト、FUNK BANDの亡きメンバーたちの写真をステージにあげて、みんなで「Ain’t No Mountain High Enough」を歌うシーンはずるい、あれは泣いてしまうわ。

Thursday, December 31

大晦日だというのに、朝の掃除を済ませた後、なんだかダラダラぼうっと過ごしてしまう。スーパーに買い出しに行き、お昼にカレーライスとビールをいただいて2015年のカレー納めをしてから、紅白なますや鮭の昆布巻き、甘辛うずらの卵と絹さや、卵焼きなどつくり、おせち料理を完成させる。今年はわりと短時間でつくり終えることができた。棚から重箱を取り出し、おせちを詰める準備をする時、いつも厳粛な気持ちになる。今年もこの作業ができてよかったと、来年もできますようにと、静かに祈る。わたしはお重にきれいに詰めるのが下手なので、詰めるのは夫が担当。

最後にもう一度家の中の主要な部分を丁寧に掃除して、年越し蕎麦(鮭の昆布巻、ほうれん草、長ねぎのせ)、ビール。おせち料理も少しだけよそって食べる。シンクをきれいに洗い、蛇口まわりも拭き、壁も拭いて、ゴミをまとめ、布巾やスポンジを新しいものに取り替えたりしているうちにだんだん眠くなってしまった。作業を終えてソファに身を落ち着けた途端、何かアレルギーに反応した? 何か刺激物を吸い込んだかな? と思われるようなくしゃみを立て続けにして、続いて喉がヒューヒューイガイガする違和感。まさか風邪? 風邪の気配なんて一瞬前までこれっぽっちもなかったんですけど。風邪だったらどうしよう、嫌すぎる。これは何かに反応したんだ、あるいは乾燥している季節のせいさ、風邪ではないさ、と無理矢理思い込ませて、Twitterを開くと、紅白関連のみんなの大喜利Tweetが炸裂していた。可笑しくてケラケラ笑いながらタイムラインを眺める。

ここ数年、年が変わる前に寝てしまおうと早々に床につくことが多かったけれど、結局眠れないし、なんだかなー、という感じだったので今年は起きていることにして、ソファに座って、年をまたいで、写真集を眺めた。林田摂子『森をさがす』、ジョエル・マイロウィッツ『CAPE LIGHT』、ルイジ・ギッリ『It’s Beautiful Here, Isn’t It…』、ダレン・アーモンド『The Civil Dawns』、鈴木理策『Stream of consciousness』の5冊。年が明けても街は静かで、ほんの少し歓声があがったのが聞こえただろうか? このあたりは除夜の鐘も聞こえないし。夜中、やはり喉に違和感。風邪なのかまだ判然としない。