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Tuesday, December 1

『麦秋』(小津安二郎監督、1951年)を観る。小津と原節子が組んだ作品の中でも、これは相当に柔らかくさりげないユーモアがきいている。夜、紀子(原節子)が買って帰ってきたケーキを義姉(三宅邦子)が食べるシーンで、向こう側の襖が開いて、紀子の兄(笠智衆)が顔を出す、すると三宅邦子がびっくりして体制を崩す、というこの場面大好き。原節子と三宅邦子が砂浜を歩く場面は途方もなく素晴らしい。ふたりは白いブラウスに長めのスカートをはいて、背景は青く広がる空しかない。

Thursday, December 3

『秋刀魚の味』(小津安二郎監督、1962年)を観る。後期小津映画の女性たちはよく手ぬぐいやふきんを操り、弄んでいるが、この映画の岩下志麻も首にかけたタオルを勢いよく払いのける仕草が強い印象を残す。

Saturday, December 5

Bunkamura ザ・ミュージアムで「ウィーン美術史美術館所蔵 – 風景画の誕生 – 」。ウィーン美術史美術館の収蔵作品70点を集め、どのように「風景画」が誕生したのかを考察する展示。普段あまり観ることのない作品をたくさん観ることができた。それから東京都庭園美術館で「オットー・クンツリ展」。この美術館の空間を活かす素材としてジュエリーというのは絶妙だった。ジュエリーとはいえ写真作品ありインスタレーションありと、多様な展示で飽きさせない。新館ギャラリーで観た、額縁を分解してつくったジュエリーは斬新。予想以上に素敵な展覧会だった。夜は、目黒シネマで『つぐみ』(市川準監督、1990年)を観る。この映画の牧瀬里穂はつぐみそのものだ。何でもかんでもナレーションで説明しすぎという欠点はあるが、牧瀬里穂の圧倒的な存在感が勝利していることは間違いない。そしてあのエンディングを、何年経ってもわたしは偏愛してやまない。映画を観る前に通りがかった花屋で目をつけておいた大ぶりのポインセチアを買って帰る。