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Monday, January 4

本日まで正月休み。午前中、渋谷のツタヤにDVDを返却してからマークシティのスターバックスでしばし読書タイム。ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』(新潮社)を読む。twitter界隈を渉猟すると昨年のベストのなかに本書を入れている人がちらほらいて、なるほど2015年のうちに読んでいたらベストテンに入選させたくなる佳作だと思った。ロサンゼルスに住む一般人を尋ねまわるインタビュー集だが、ミランダ・ジュライによる人物評はけっこう直截的なので、こんな本なんかにしてしまって、とりわけあの左の足首にGPS装置をつけられた男の反応が怖くてしょうがないのだが、大丈夫だったのかな。

新年一発目の本購入はブックオフで。今年は没後100年の夏目漱石を読もうと、数冊買う。ただ本当は漱石よりも鷗外のほうをちゃんと読みたい。

きのう石川美子『ロラン・バルト 言語を愛し恐れつづけた批評家』(中公新書)を読んで、みすず書房の「ロラン・バルト著作集」が完結していないことを思い出した。2006年の配本を最後に残り第8巻だけがいまだ刊行されていない。翻訳作業はいちおう継続中のようなので、頓挫しないことを願いたい。人文書院刊行のサルトル『家の馬鹿息子』の翻訳だって去年ようやく動き出したことだし、と思いつつ本棚からバルトの『映像の修辞学』(蓮實重彦、杉本紀子/訳、朝日出版社)を抜き取ったのだが、ここで蓮實重彦が翻訳した本を選択したのに他意はない。

朝、クロワッサン、目玉焼き、トマトと紫玉ねぎのグリル、珈琲。
昼、卵かけごはん、かぶと長葱の味噌汁、緑茶。
夜、ビーフストロガノフ、シメイレッド。

Tuesday, January 5

仕事始め。虚礼としての「あけましておめでとうございます」発言がオフィスで飛び交う。

「君、元日におめでとうと言われて、実際おめでたい気がしますか」
「そりゃ・・・・・・」
(夏目漱石『三四郎』)

リチャード・A・スクーズ『フロイトとアンナ・O 最初の精神分析は失敗したのか』(岡本彩子・馬場謙一/訳、みすず書房)を読む。精神分析に特段興味はなくても、フロイトとブロイアーの共著『ヒステリー研究』に登場する患者アンナ・Oの治療は実際には失敗だったという話はどこかで目にするものだが、本書はその「定説」を批判し、フロイトとブロイアーの名誉を回復しようと企図された本である。文献を渉猟して「定説」を覆していくさまは、さながら推理小説のような手捌きだが、しかし精神分析自体が斜陽となった現在にあって、果たしてこの名誉回復がどれほどの意義をもつのだろうかという疑問はつきまとう。

朝、トマトピザトースト、珈琲。
昼、弁当。
夜、白米、しめじと長葱の味噌汁、小松菜のおひたし、大根と人参の煮物、焼き魚(かれい)、大根おろし、キムチ、ビール。

Wednesday, January 6

積読のまま図書館への返却期限の迫った江村洋『ハプスブルク家』(講談社現代新書)を読む。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)を見る。アカデミー賞作品賞をはじめ数々の映画賞の栄光に輝いた作品を見て、その企図と野心は汲むが、このくらいの作品で騒つくようならば映画の現在進行形を追う必要はないかなと余計な御世話な感想を抱く。

朝、ベーコンポテトドッグ、珈琲。
昼、弁当。
夜、味噌ラーメン、白菜の漬物、ビール。

Thursday, January 7

近頃Instagramばかりを熱心に更新しているのは行動記録として撮りためておくとあとから日記を書くのに便利だという意図からなのだが、せっかくのインスタだし、それなりに小洒落た感じでインスタっぽい写真をアップしようと目論んで実行するものの、如何せん撮影対象がアメリカ軍がベトナム戦争でいかに虐殺ばかりやっていたかを論じたニック・ タース『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』(布施由紀子/訳、みすず書房)の書影だったりする。

朝、(七草入っていない自称)七草粥、白菜の漬物、梅干し、緑茶。
昼、弁当。
夜、牛肉のステーキ、オニオンスープ、バタール、テリーヌのパイ包み、人参サラダ、トマト、紫玉ねぎ、ビール、赤ワイン。

Friday, January 8

iPadで『エコノミスト』誌を読む。『CREA』2月号(文藝春秋)を買う。

朝、トースト、ブルーベリージャム、人参サラダ、珈琲。
昼、弁当。
夜、焼きそば、小松菜の中華風スープ、麦酒。

Saturday, January 9

「大人の少年少女文学。」と題された特集を組んだ『CREA』は、編集部の底力を見せつけるような充実の内容でよい。

朝、くるみパン、バター、茹で卵、珈琲。
昼、力うどん。
夜、海鮮丼、ほうれん草とわかめの味噌汁、白菜の漬物、ほたるいか沖漬、麦酒。

Sunday, January 10

いざ鎌倉。道中の読書は夏目漱石『草枕』(新潮文庫)。昼前、横須賀線の鎌倉駅に到着したはいいが、ものすごい人の数で改札口に辿り着くまでに10分くらいかかった。年頭の鎌倉を舐めていた。鎌倉の混雑状況についての無知はとても元住人とは思えないが、しかし鎌倉に住んでいた当時は観光客が向かう場所にほとんど行かなかったので、いつ混むかどこが混むかをまるでわかっていない。どこの飲食店も行列ができていて、開始早々予定が総崩れする予感のなかミルクホールに向かうとあっさり座れた。やや拍子抜け。

本日の主たる目的である神奈川県立近代美術館鎌倉館に向かうも、大行列でやる気がなくなる。土地所有権をもつ鶴岡八幡宮との土地貸借契約満了が閉館理由なのを棚上げして、終わるときだけ来るな、普段から来い、だから美術館がなくなっちゃうんだと悪態をつきたくなる。大行列の坂倉準三建築は後回しにして、川喜多映画記念館で「映画が恋した世界の文学」の映画ポスター展示を見る。原節子の写真パネルがならぶ小特集も。

それから、どんな様子かと興味本位で鶴岡八幡宮の境内に入ってみるも、予想通り大変な人だかりとなっており、家族連れの父親が「えー! こんなのダメだー!」と叫んでいる。同感である。

KIBIYA BAKERYでパンを買って、由比ヶ浜海岸へ。快晴の砂浜を歩く。

閉館1時間前の神奈川県立近代美術館に戻ると、ようやく行列がなくなっている。「鎌倉からはじまった。1951-2016 PART 3」を鑑賞。好きな建築だし、頻繁とは言えないけれどもそれなりに来館している美術館にもかかわらず、「鎌倉近代美術館(略称:カマキン)」として長く愛されてきましたと説明があって、そんな略称知らんぞと思った。

夜、Osteria Comacinaで夕食。店内のBGMが吾妻光良 & The Swinging Boppersだった。おいしい食事とよい音楽。夜8時すぎ、鶴岡八幡宮に行ってみるとあの人ごみは幻だったかのように誰もいない。

朝、ハム、玉ねぎ、ほうれん草、トマトのグリル、トースト、珈琲。
昼、ミルクホールにて。
夜、Osteria Comacinaにて。